「海外駐在」と聞くと一般の人はどのようなイメージを持っているのでしょうか。
多くの人が思い描くイメージがあるかもしれませんが、概ね間違ってはいません。海外に一人駐在させるというのは非常に多くの費用が掛かります。
会社にとってみると「仕事のできる人」「海外で活躍できる能力」がある人の中でも突出して優秀な人材を送り込みたいのです。
したがって、他の会社から見ると海外駐在をするような人は、赴任する前の段階でも魅力的な人材であることが多いです。
まして、実際に駐在を経験すると、海外駐在で得ることができた経験や言語力、さらには指導力がアップしており、自分のキャリアアップとして転職を考えるときにも大きなアピール材料になります。
もくじ
海外駐在で得ることができるもの
海外駐在と言っても実際にはどのようなスキルを得ることができるのでしょうか。
真っ先に思いつくものが「言語力」ではないでしょうか。
でも、それだけではありません。ここでは海外駐在で得ることができる力について紹介します。
語学スキルが大幅にアップ
海外駐在で身につく力として最初に思いつくのが「語学力」ではないでしょう。
確かに、海外駐在をするような部署に配属されている人は、元々語学力が高いことから選ばれているケースが多いです。
さらに海外赴任をするにあたって、独自で語学力を高めていたり、英会話スクールやオンライン英会話を利用して、ビジネス英語だけでなく日常生活で使うことができる英語力を高めて赴任していたりするケースもあります。
海外に駐在するようになると、どうしても現地の言葉を話さないといけなくなってきます。
仕事上の打ち合わせはもちろん、現地社員との会議も日本語で行われることはほとんどなく、現地の言葉で行われます。
赴任直後は通訳を介しているかもしれませんが、普通に仕事をしていても1年程度あれば日常生活に支障のない語学力が身につきます。
マネジメント能力がアップする
2つ目に海外赴任で得ることができるスキルが「マネジメント能力」です。
海外駐在をする場合、技術職として工場でものを生産する経験をする人は少ないです。
どちらかというと管理職扱いとなり、現地の作業状況の管理や運営、より発展させるために他の企業との連携をしていく中心となることが多いです。
当然、必要になってくるのは現地のスタッフを円滑に動かして生産性を高めるスキルやコミュニケーション能力が求められ、海外駐在をする前にも日本で、マネジメント能力が高いかどうかの審査を受けて、認められることによって赴任につながっているケースがあります。
海外駐在をしていると仕事面でのマネジメント能力は飛躍的に伸びることになり、経営者としての資質があるかどうかが見極められます。
日本では数人の部下を動かす主任クラスだった人が数百人の部下を動かす能力が求められ、会社がうまく稼働しているということは、マネジメント能力が高いと認められることになります。
グローバル社会で仕事をする知識を得る
海外で仕事をしていると詳しくなるのが、その国と日本との関係性です。
国内で仕事をしている場合には意識しなくてもよい文化の違いや人種の違いによる配慮、休日などに関わる法律に関する配慮をしていかなければ、現地の人と円滑に仕事をしていくことはできません。
ほかにも、日本と現地の国だけでなく、その間を仲介してくれる企業や国、大きな会社であればサプライヤーとの関係性も非常に大切になってきます。
日本で仕事をしていれば、そこまで気にすることなかったことが海外で仕事をしていると非常に大切になり、その間を上手に取りもっていく能力が求められます。
このようなグローバルな視点は海外勤務をしなければ身につけることができないことでもあります。
海外駐在を経験している人は、常に周りの情報に耳を澄まし、グローバル社会で仕事をしていくための視点と自分の会社を守るためにはどのようにすればよいかという危機管理能力を持っています。
海外駐在の経験は転職に有利になるか
海外駐在をしていると転職するときに有利になるかどうかが駐在妻の間でも話題になることがあります。
これは、結論から言えば「大きく優位になる」といっても過言ではありません。
事実、海外赴任をしている旦那さんの経歴を聞くと、今の会社に転職する前の会社でも、海外赴任を経験(これは結婚する前のケースが多い)、または学生時代に海外でインターンシップの経験があるという話はよく聞く話です。
語学力を求めている会社へは有利
なぜ、海外駐在の経験は転職するときに優位になるのでしょうか。
一番大きな理由は、企業にとって「海外駐在できる人材の育成にはお金と時間がかかる」という点です。
企業にとって海外駐在をさせる人材を育成しようとすると通常の業務以外に語学スキルや仕事の専門的なスキルを高めてもらう必要があります。
海外には何人もの人を送り込むことができないので能力の高い人を送り込むのですが、そうした人を求人から見つけ、さらに会社で育成し、一人前にするには数年、十数年という単位で時間が必要になります。
加えて、語学スキルの問題も発生します。海外駐在で仕事ができる語学スキルは簡単な語学スキルではありません。
専門用語から日常生活の会話、業種によってはビジネス英会話程度までできる必要があります。
これだけでの語学力をもった人を育成しようと思うと語学教室に通わせるための費用も掛かりますし、語学を習得させるための時間もかかります。
そのため、海外駐在をした経験のある人は、その段階で企業が育成しようとしているラインをクリアしている可能性が高いです。
企業側からしてみると一から人材育成をする必要がなく、特に時間のかかる語学力の育成ができている人を転職で獲得できるのは大きなメリットがあります。
専門的な語学力を持っていればエンジニアにもなれる
海外駐在で活躍をする人は事務系や営業系の人ばかりではありません。
特に近年は生産拠点を海外に移している企業が大手を中心に増えており、そんな会社にとってみると海外で働くことができるエンジニアは喉から手が出るほど欲しい人材です。
エンジニア系の人は元々工業系の学科や学部を卒業していることが多く、エンジニアとしての技術は長けていても海外で働くことができる語学力をもっているかというと、なかなか持ち合わせている人は少なく、企業も育成に苦労する人材です。
そこで海外駐在を経験しているエンジニアはとても人気があります。
実際に海外駐在エンジニアをしている人でいくつもの企業を渡り歩いている人もいますし、ヘッドハンティングされて日本の企業から外資系の企業に転職したような人もいました。
こうした人に共通しているのが高い語学力をもっている点です。日常的な会話はもちろんのこと、専門的な用語も話すことができますし、文章にして説明をすることもできます。
レベルの高い人になるといくつかの言語を使い分けて話すことができるので、グローバル企業であれば貴重な人材となります。
海外駐在の経験を生かして転職するのであればまずは語学力を生かす
そこで、海外駐在の経験を生かして転職したいのであれば高い語学力を生かすことが大切になります。
この語学力は日常会話ができるだけでなく、ある程度「専門的な単語を使った会話ができる」「専門的な文書を読むことができる」「専門的な言葉を使って表現できる」これぐらいのスキルが求められてきます。
例えば、法律家や行政書士を例に挙げるのであれば、現地の法律に関して書かれた専門書を理解して、その内容を基に自分の会社の状況や事例を説明するだけの力が必要になります。
技術系であれば、専門的な説明書を理解して、機械を操作し、その内容を現地スタッフに教えることができるレベルです。
これだけの語学力をもっていれば、転職をする際にも大きな武器になります。
複数の言語を話すことができる
グローバル化が進んでいる現代において、2つの言語を話すことができるだけというのは少し物足りない部分があります。
特に海外駐在員を派遣するような会社であれば、日本語と世界の共通言語である英語、さらに現地の言葉の3つぐらいは使いこなせるようになりたいです。
私の知人の話ですが、元々日系の航空会社のグランドスタッフで働いていて、結婚し駐在妻となって人がいます。
この方は日本語と英語を話すことができる程度だったのですが、メキシコに旦那の仕事の都合で転勤となり、スペイン語の学習をしてある程度のスペイン語を話すことができるようになりました。
駐在して1年が経過した頃、これまでのキャリアや語学力を生かして現地でできる仕事を探していたところ、メキシコの航空会社に3つの言葉を話すことができる点が評価され、就職をすることになりました。
現在では、メキシコの航空会社からアメリカの航空会社に転職し、アメリカで働いている方ですが、この人も3つの言葉を話すことができるという点が評価され、転職した一例になります。
このようにいくつかの言語を話すことができるというのは転職をする際にも大きく役立ちます。
語学力で転職をするためにも学ぶことが大切
語学力を将来的に転職に活かしたいと考えている人も忘れてはいけないのが「日々の学習」です。
語学は生き物なので使っていなければ、自然にその力が落ちていってしまいます。そこで海外駐在中、そして帰国後も欠かさず行いたいのが語学の学習です。
だいたい、駐在をする前には、英会話教室に通ったり、オンライン英会話を利用して学んだりと語学学習に意欲的になり、様々な方法で学ぶ人が多いです。
一方で、駐在中や駐在が終わってからになると、語学学習への意欲は急速に低下していき、学びを辞めてしまう人が多くなります。
これではいざ転職を考えたときに自分の持っている語学スキルを生かすことができません。駐在生活で語学スキルを高めることができたからこそ、その能力をさらに高めることが転職では大切になります。
駐在が終わったころには語学スキルがかなり高まっており、応用クラスでなく、ビジネス英会話まで堪能にできるぐらいまでレベルが高まっていることが多いのではないでしょうか。
ここから先は一般的な英会話教室ではなく、高いレベルの語学を学ぶことができる教室を見つけましょう。
自分が居住している周りにそのような語学教室がない場合にはオンライン英会話も味方になります。
オンライン英会話の教室であれば、日本のどこにいても勉強に参加することができますし、教室まで通う時間のロスを減らすことができます。働きながら語学学習をするのであれば、できるだけ余分な時間は削減したいと思いますので、その点からもオンラインであれば学びやすくなります。
個別最適化して学習プログラムを組んでいるところも多いので、他の人のレベルに合わせる必要がないというメリットがあります。
指標となる評価を取っておく
語学の学習をしていくときに忘れてはいけないのが、自分を客観的に評価してくれる数字を取得しておくことです。
代表的な例を挙げれば「TOEIC」になります。
ほかにもよく知られているもので実用英語技能検定(英検)、日商ビジネス英語検定などがあります。外資系の企業への転職を考えているのであれば、「国際連合公用語英語検定試験(国連英検)」や「Linguaskill Business(リンガスキル ビジネス)」などが有名どころになります。
これらの検定を受けて、ある程度のスコアをもっておくと転職をする際には大きな武器となります。
ここでは英語だけを紹介しましたが、中国語や韓国語、スペイン語などにおいてもそれぞれ独自の語学能力を測定する検定があります。
いくつかの言語ができることを生かして転職したいのであれば、それぞれの言語の検定を取っておき企業にアピールできるとよいです。
これから海外進出を考えている企業に
海外駐在の経験を転職に生かすのであれば、駐在経験のある人を求めている会社を探すことも大切になります。
- これから海外支店をつくる計画がある
- 事業を拡大している
- 海外との取引が多い
こうした会社は、駐在経験のある人を求めている傾向があります。
最近はオンライン化が進んだため、海外に赴任させる目的で求人を出している企業は減っている傾向がありますが、海外とやりとりをする会社は増えています。
海外支店を持っていなくても、これからグローバルな展開を考えている企業であれば、駐在経験のある人材は欲しいところです。
マネージャーとして運営する経験を活かす
海外駐在をすると、会社を運営または、現場をリードする立場として赴任することも多くあります。
このような立場で働いていると「マネジメント能力」が高まってきます。企業でも管理職以上になってくると「マネジメント教育」が社員研修の1つとして行われていることがありますが、海外駐在で語学力の次に伸びてくるのがマネジメント能力です。
筆者の夫の話ですが、駐在の仕事と日本での仕事の大きな違いは「多様性」といいます。
日本の文化や考え方が通じない人たちに働いてもらうためには「自分自身が現地に入り込んでいく」しかありません。
その中で「様々な情報をつかみ、つかんだ情報を基に会社にとって一番良いように構築する。」この作業をするためには、構築するためのマネジメント能力が必要になります。
そして駐在を経験した人の多くが、日本に帰ってからもその力を発揮して会社に貢献していると話していました。
このような力は転職をするときの説明でも大きな武器になります。ただし、マネジメント能力はなかなか数値として証明することが難しいです。
会社の業績を高めた客観的な数値やこれまでやってきた実績を端的にまとめて話すことができるように準備しておきましょう。
大きな会社であれば「肩書」だけでも、転職先に能力の高さを説明することができるかもしれません。
転職を有利にするために高めておきたいスキル3つ
ここまで海外駐在が転職でも有利になることを説明してきましたが、解釈として間違えてほしくないのは「駐在経験=転職に有利」というわけではありません。
「駐在経験で身につけた能力=転職に有利」という図式になります。
したがって、海外駐在をした経験をもとにどんな能力を伸ばしておくとよいか3つを紹介します。
語学に関するスキル
最初に紹介するのは、ここまで何度も紹介してきている「語学」に関するスキルです。
日本語と現地の言葉で日常会話ができる程度は最低限でも欲しいスキルになります。
海外駐在経験で、ある程度の語学力ができるようになっているのであれば、日本に帰国してからもさらに能力を高めることができるように努力しましょう。
努力をしていくときにポイントになるのが、どんな企業を転職先と考えているかです。
語学ができるようになってから転職先を探すと効率が悪い部分が出てきてしまいます。
先にある程度転職先の会社や業種の目星を付けておきます。次に語学の勉強をしていきましょう。
会社によっては1つの言語の深い知識を求めている場合(行政書士や弁護士などはこっちに近いグループ)と複数の言語を求めている場合(製造関係や輸送関係など)があります。
駐在経験で語学に関するベースの知識は持っているので、このベースに上積みをすることが大切になります。
もう1つ忘れてはいけないのが「資格」です。転職をするときには、客観的な数字でアピールすることが必要になります。
駐在経験だけで話をしても、その人に本当に語学力があるのか、ないのかは企業側で判断することができません。
TOEICや英検など客観的に判断できる数値を用意しておきましょう。
これらの点数を獲得するためには、駐在経験で培った語学力だけでなく試験対策もしておく必要があります。
試験対策をすることができる語学教室や時間がない人にはオンライン語学学習もあるので活用すると高得点を獲得しやすくなります。
グローバル社会で活躍できるスキル
2つ目に高めておきたいのがグローバル社会で活躍できるスキルです。
企業の管理職として求められることが多いマネジメント能力を高めておくことも大切です。
特に海外の企業と連携するとなると日本のことだけでなく世界情勢のことも知っておく必要があります。
一見、自分の仕事とは関係のないことでもどこかでつながってくる可能性があることを意識して情報を収集しておきましょう。
特に近年はICT環境が整ってきたことによりICTの活用能力も求められてきます。
外国人にプレゼンテーションをするには、どんな人にもわかりやすいユニバーサルデザインを意識した発表紙面づくりや伝え方の工夫が必要になります。
駐在をしているとこのような場面は多く、自然とどんな人にも理解してもらえる発表ができるようになってきます。
このようにどんな人にもわかりやすく伝える能力、また、たくさんの情報の中から必要なものを取り出して周知していくマネジメント能力を高めておくと転職では優位になります。
人の能力を見抜くスキル
3つ目は「人を見る」能力です。駐在をしているといろいろな人と接することになります。
文化や民族性が日本と大きく違う海外では、多様な人をどのようにまとめていくのかが重要になります。
そこで、人を見る能力が大切になります。
同じ会社で働きながら、どんな能力を持っているのか、現在の仕事でその能力を生かすことができているのかを見抜く力を身につけましょう。
このスキルは日本に帰ってからも大切なスキルとなりますし、転職する際にもアピールポイントになります。
人の能力を見抜く力が高い人は会社の力を高めてくれる人材になるので企業側から見ても欲しい人材になります。
まとめ
ここまで海外駐在が転職に有利になるのかどうかを解説しました。
結論から言えば「駐在は転職に有利」です。その理由は、語学力が高く、さらにマネジメント能力が高い人材はどの企業も欲しいからです。
筆者の周りにも海外での駐在経験があったからこそ、前職の経験や身につけた能力を生かして、現職でも海外駐在で活躍している人が多くいます。
ただし、駐在経験が生きるのではなく、駐在で身につけたものが転職で評価されているので、日本に帰国後も、スキルアップしていくという姿勢が大切です。