駐在妻の生活というと、優雅に旦那のお金や赴任手当などを使って専業主婦をしているというイメージがあるかもしれません。
しかし、実際にはそんな人はほんの一握りであり、大多数の駐在妻は日本と同じような生活をしながら過ごしています。
どちらかというと日本以上にストレスがかかる人も多く、海外赴任をしたことによって精神的に参ってしまったり、日本に帰国してしまったりする駐在妻もいます。
なぜ、このようになってしまうのでしょうか。
そこには海外生活独特の5つ要因が影響しています。
ここでは、駐在妻の生活をしんどくする6つの要因とその解決策について紹介します。
もくじ
【要因1】意思疎通をすることができない
駐在妻の多くが最初に突き当たる壁が「言葉」を含めた意思疎通の壁ではないでしょうか。
赴任する前から言葉に不安を抱えていた人であれば、実際に現地に行って「言葉が分からない」「何と言っているのかわからない」そんな状況を何度も経験していると、海外生活が一気にしんどくなってしまいます。
駐在妻となるとサポートが旦那ほど手厚くありません。
旦那さんは通訳が付いたり、語学学習に通うことができたりと意思疎通をすることができるように手厚いサポートが付いていることが多いです。一方、駐在妻に関しては家庭教師が付いたり、現地に滞在している先輩駐在妻がサポートしてくれたりしますが、その時間は限られています。
特に最初のうちはサポートがあるのですが、しばらく経ってくるとサポートが離れます。
私はこの時が一番辛かったです。
一人で買い物にいかなければいけない、子どもの学校に行くためにタクシーを呼ばなければいけない、そんなことがとても苦痛に感じました。
語学を学ぶ、半年後には変わる
意思疎通で悩まないようにするためにはどうすればよいのか、解決策は「語学を学ぶこと」です。
やっぱり意思疎通は学ばないと上手にはなりません。
独学で勉強することもできますが、英会話教室や英語コーチングなどを利用すると効率よく勉強することができます。
そして、もう1つ大切なことが「早めに始める」ことです。
赴任が決まってから勉強を始める人もいますが、できれば「赴任するかも・・・」という予兆段階から始めるぐらいでもよいです。
元々、語学に抵抗感がない、英語をそれなりに話すことができるという人であれば語学の勉強も抵抗感なく入れますが、語学が苦手という人はなかなか上達しません。
しかし、半年程度やっているとある程度理解ができるようになってきます。
単語をつなげるだけ、書いてある単語の意味が少しわかるだけのレベルで赴任することになるかもしれませんが、ここまでできれば十分です。あとは、現地に行って話をすると爆発的に伸びていきます。
意思疎通に関しては、誰かに頼ってばかりではなかなか伸びません。
怖いかもしれないけれど、外に出て行って自分で話してみるのが一番です。
単語を書いたメモを見せても良いですし、辞書を持ち歩いて検索しながら、スマホの通訳機能を使いながらでも十分です。
自分で何とか意思を伝えようと努力をすれば、後は時間が解決してくれます。
スマートフォンの翻訳機能など簡単に使えるサポート機能も増えています。
サポートしてくれるものをフルに活用して、しんどさを和らげていきましょう。
【要因2】自分の存在価値を見いだせない
2つ目に並んでしまうのが「自分の存在価値を見失ってしまう人」です。
これは、いきなりこのような状況になるのではなく、意思疎通が出来なかったり、自由に行動できなかったりと様々な要素が絡んで自己嫌悪に陥ってしまう駐在妻が時々見られます。
筆者から見るととてもまじめで、どんなことにも手を抜かない、日本でも仕事と家庭を両立させてきた妻の鏡のような人に多い傾向があります。
日本でも「マリッジブルー」や「マタニティーブルー」という言葉がありますが、これまでと生活環境が変わってしまうことによって精神的に安定しなくなる「〇〇ブルー」とよく似ています。
無理矢理名前を付けるのであれば「海外駐在ブルー」とでも言えばよいでしょうか。
筆者の周りでも駐在に伴って精神的に不安定になる奥さんは多く、しんどい状態にならないように先輩の駐在妻や日本人会などがサポートをしますが、やっぱり潰れてしまう人もいるのが現実です。
海外でも自分の特技を生かして価値を示す
海外で自分の存在価値を見出すことができないと悩む駐在妻にぜひ考えてほしいのが、自分のもっている能力を活かすことができる場所は海外にもあるということです。
もちろん赴任してすぐに能力を発揮するのは難しいかもしれません。
しかし、ある程度時間がたって海外生活に慣れてくると広い世界が見えてきます。
特に日本人としてもっている能力はとても貴重で様々場面で生かすこともできますし、やり方によってはその能力で稼ぎを得ることもできます。
海外に住んでいる日本人は、お互いに助け合って生活する部分が日本に住んでいる時以上に多いです。
看護師の経験がある人が日本人学校の養護教諭の役を担ったり、日本で美容師だった人が、赴任後に自宅で簡易美容室を作ったりするケースもあります。
何か特技があるのであれば積極的に公表してみましょう。
意外とその能力を必要とする人が見つかるかもしれません。
そのためには、赴任後に人間関係作りが大切で、他の企業や子どもと同じ学校の保護者とつながっておくと、ちょっとしたことから自分の存在意義が認められることになります。
【要因3】頼れる人が少なく追い詰められ引きこもる
次に海外駐在がしんどくなってしまう要因として「頼れる人が少ない」という点があります。
日本であれば、信頼できる自分の親や親族、そしてこれまでに作り上げてきた人間関係がありましたが、海外赴任になるとこの関係が一気に無くなります。
特に親族とのつながりがなくなるのはつらく、育児やちょっと困ったときに「お願い」と簡単に頼ることができません。
育児に関してはワンオペ状態になってしまうことも海外あるあるです。
昔に比べればSNSを利用したメッセージやテレビ電話などが普及して相談しやすい状況ですが、それでも日本のときのようなサポートを受けることはできなくなります。
そして、頼ることができない時期が続くとだんだん追い詰められていって引きこもるようになってしまいます。
自分から少しずつ外に出ていってみよう
まず、前提として海外赴任になるということは「ワンオペになる可能性が高い」ということは覚悟をしておきましょう。
そして、覚悟をするだけでなく、ワンオペ状態になってもよいように準備をすることが大切です。
家事を楽にすることができるようなものがあれば日本から買ってでも持っていくべきですし、現地についてから探すのもよいです。
また、引きこもりにならないようにいろいろな会に顔を出していくのも大切です。
駐在をしているといろいろな集まりがあります。子どもが学校に通っていれば、学校関係の集まりも頻繁ですし、授業公開の日は保護者の出席率が100%ということもよくある話です。
このような手軽に出席することができる会から人脈を広げていくと人間関係も広がりますし、困ったときにサポートしてくれる人も増えます。
同じ日本人同士であれば、言葉の心配をする必要もないので気軽に会に出られると思います。
【要因4】相手の文化に入ることができない
駐在妻がしんどいと感じる要因の4つ目は「文化の違い」です。
海外に住んでいるとその国の風習や文化に従わなければいけません。
日本の文化に慣れてしまっていると、文化が違ってくると生活が変わってきます。
筆者はアメリカやメキシコの滞在が長いのですが、アメリカは多民族国家らしくとてもおおらかでいろいろな国の文化が交じり合っています。
また、自国の文化を強く押し付けるようなこともあまりしてきません。
しかし、メキシコや短期間滞在していたUAE(アラブ首長国連邦)は国の文化が強く、宗教的な要素もあってかなり制約が強い印象を受けました。
最初のうちは相手の国の悪い部分ばかりが見えてくるようになってしまい、このままこの国でやっていくことができるのだろうかと不安になったのを覚えています。
相手の国の悪い部分ではなくよい部分を見てみる
では、このような状態になったときにはどうすればよいのか、大切なのはリフレーミングです。
考え方を変える方法で、悪い部分を見るのではなく良い部分を見てみましょう。
筆者も初めて駐在をしたときには時間や約束を守らないルーズさにイライラしました。
日本人は事前に予定を決めておいて、それに向かって準備し、時間内にやり遂げるのが当たり前になっていますが、アメリカやメキシコはこのようなことが苦手です。
だいたい時間オーバーするか、そもそも予定を立てるようなことはしません。
しんどくなってくると悪い部分ばかり目に付くようになりますが、ルーズな分、寛容的な部分が多いのも事実です。
そこで自分も日本のような考え方を捨て、細かいことは気にしないようにしました。
慣れるまでに半年ほどの時間はかかりましたが、相手に合わせていくと自然と良い部分も見えてきます。
【要因5】自由に行動をすることができない
海外生活は日本と違って「自由」が制限されます。
これも海外暮らしがしんどいと思ってしまう原因です。
日本は治安が良く、一人で行動していても問題ありませんが、海外の場合、住む場所にもよりますが、完全に自由ではなくなります。
すると「日本は良かった」「海外は息苦しい」と感じるようになり、しんどさが増していきます。
駐在妻に限らず、どんな人も「できていたことができなくなる」というのはとてもストレスです。
生活スタイルが大きく変わってしまうので、はけ口がないとどんどん追い込まれていくことになります。
思いつきではなく計画的に活動しよう
では、自由に行動できないことをどう解消するのかというと「計画的な活動」に変えるとストレスが軽減されます。
自由に動くことができるというのは「思い付きで行動できる」とほぼ同じです。海外暮らしでは「思い付きの行動」というのが危険を伴います。
事前に行き先ややりたいことの計画をある程度立てておき(綿密に立てると思い通りにいかないことがストレスになる)、安全面の問題だけクリアーしましょう。
一番大切なことは自分の命を守ることです。
物事をする前に計画を立てる時間が必要になりますが、そこまで時間のかかることではないので、行動の前に準備ということを意識しましょう。
【要因6】気を遣うことが多すぎる
海外暮らしをしているとプライベートの情報が周囲に漏れやすくなります。
特に人間関係が近くなればなるほど、プライベートとパブリックの境がなくなってしまい、「気遣い」をしなければいけない場が増え、ストレスになります。
海外の日本人の世界は非常に狭いです。ちょっとした噂話はすぐに回りますし、SNSの普及もあってさりげない投稿が大きな波紋を呼ぶことにもあります。
旦那の勤め先や役職によっても駐在妻同士のヒエラルキーのようなものもあります。
そのため、普段の言葉遣いから言動、さらには服装にまで気を遣わないといけません。
これも駐在妻生活がしんどいと感じてしまう要因になります。
旦那と常に報告・連絡・相談を意識する
このように狭いコミュニティーの中で生活していくときに大切なのが、旦那とのコミュニケーションです。
駐在妻が失敗するケースで多いのが「情報を知らずに勝手に判断して地雷を踏む」こんなケースが目立ちます。
海外に赴任をするような旦那であれば、会社から生活における注意点なども聞いていることが多いのですが、それが奥さんに伝わっていないことも多いです。
常に旦那とコミュニケーションをとり、日本であればたいしたことではないことでも相談し、お互いに情報共有しておくことは大切です。
二人で「報告・連絡・相談」をしっかりと行っていくことが駐在生活だけでなく、家庭生活も円満にするポイントになります。
まとめ
ここまで駐在生活がしんどくなってしまう要因と解決方法について紹介しました。
駐在妻が、しんどくなってしまう要因は、1つではなく複数のものが重なります。
それらがどんどん悪いスパイラルにはまっていくことで、海外生活がしんどくなります。
逆に何かのきっかけで1つ変われば、気持ちは劇的に変化します。
日本とは違う部分が多くストレスもたまるでしょうが、それを上手に解消するものを赴任時に持っていくとよいです。