駐在妻をやっていると周りからは「人生の勝ち組ですね」なんてことを言われたり、言われることはないにしても噂のようにされたりすることはありました。
特に日本に住んでいるときに、こうしたことを言われたり、噂されたりすることは多い傾向でした。
今、アメリカで駐在生活を一緒に送っている奥様とお話をしていても、日本で付き合いのある人や同僚の奥さんから「露骨な嫌がらせを受けた」や「駐在妻というだけで妬みの対象にされた」なんてことも聞きます。
では、本当に駐在妻は勝ち組なのでしょうか。筆者の周りの人の本音も踏まえながら紹介します。
もくじ
駐在妻の思う本音
はじめに実際に駐在妻をしている人はどんな思いなのでしょうか。
結論として言えることは駐在歴9年目の筆者の肌感覚ですが、「勝ち組」と思っているような駐在妻はほとんどいないのではないでしょうか。
もし、「私は勝ち組」と思っているような駐在妻がいれば、その人は、旦那の収入や立場でマウンティングをとる傾向のある人なので、きっと駐在妻にならなくても、日本で同じようなことをしているでしょう。
世帯収入で見るとそんなに多くない
周囲の人が駐在妻を見て「勝ち組」と思っている要因は次のことがあるのではないでしょうか。
- 海外赴任手当などを含めてそれなりに給与をもらっているはずなので経済的に裕福そう
- 駐在するような大手の会社に勤めている
- 駐在できる旦那はエリート路線に乗っており今後が有望
確かに旦那の給与だけ見れば、日本で働いている人の同年代平均よりははるかに多い給与を得ていますし、同じ会社の中でも同年代に比べれば海外赴任に出ている分、手当が付くため給与は多くなっています。
しかし、世帯年収で見るとどうでしょうか。
妻も正社員で働いているような世帯の場合、世帯年収は夫婦フルタイム勤務の家庭の方が多いです。
駐在妻は、海外で働くということがとてもやりにくいです。働くことができたとしても日本で雇用されているときのような収入を見込むことはできません。
しかも、駐在をしている妻の多くは日本での仕事を辞めてから来ている、または休職して赴任している状態です。
日本に帰ってからも正社員として再雇用される保証がありません。そんな中で海外赴任をしているので、収入的に見れば勝ち組と言えるかどうか微妙なところです。
制約が多くセレブな人はわずか
「駐在妻は自由気ままな生活で専業主婦生活を楽しんでいる」そんなイメージをもっている人もいるかもしれません。
ただ、そんな生活をしている人は駐在妻の中でもごくわずかです。もちろんSNSでそうした部分だけを切り取って公開している人もいますが、全体から見ればごくわずかではないでしょうか。
そもそもセレブ生活をしているような人は
- 既に子育てが終っているか、お子さんのいない夫婦で赴任
- 大企業の上役(現地の社長職以上)で、付き合いも企業とのつながりづくりをしなければいけない立場の人
こんな人たちです。
一般的な海外赴任の旦那についてくるような駐在妻の場合、そんなに豪勢な生活を送ることができる金銭的な余裕も時間的な余裕もありません。
実際の駐在妻生活はかなり制約が多く、日本以上に苦労することもあります。
日本であれば、学校への登校は見送れば終わりますし、子どもたち同士で簡単に遊びに行くこともできます。しかし、海外で生活をする場合にはそうはいきません。
登下校は送迎が必要なケースもありますし、子どもが遊びに行くときには親が付いていかないと途中で何があるか分かりません。
日常生活も言葉が通じないストレス、狭い日本人社会における人間関係のストレスなどさまざまなものがあります。
中にはこうしたストレスが嫌になって駐在生活を辞めてしまう人もいるぐらいです。
日本での生活の方が制約は少なく、気持ちよく過ごすことができると感じている駐在妻もいるのは確かです。
駐在妻でよかったと思うこと
ただ、筆者を含めて駐在生活を送っている奥さんの中で「負け組」と思っている人は少ないのではないでしょうか。
勝ち組とは思うことはできないにしても「普通の奥さんとは違うことができる」という気持ちになることができるのが駐在妻です。
筆者も駐在生活を送ることになり、やっぱり「よかった」と思うことはたくさんあります。
例えば、日本からはなかなか行くことができないような観光地を訪れることが出来たり、宗教を大切にしてミサへの参加やお祈りを欠かさないという現地の人たちの考えに触れたりすることができました。
日本にいたなら、英会話の勉強を始めることもなかったでしょうし、現地に赴任してから新しい仕事に出会うこともできました。
子どもたちも海外で生活をすることに対して最初は不安感しかなかったのですが、現地でお友達ができ、様々な文化体験をしていく中で成長することができました。筆者自身は「負け組」とは思っていません。
そこで本記事を執筆するにあたり気が付いたのは「駐在妻の気持ち」によって勝ち組なのか、負け組なのかという意識が大きく変わることです。
周りからどのように評価されているのかは、家族のこれから歩んでいく道にはそんなに関係ありません。
自分たちが勝ち組であると誇る必要はありませんが、周りから「勝ち組」と思われるような過ごし方はいくつかありますので紹介します。
駐在妻が勝ち組になるためにやること5選
では、駐在妻が周囲から勝ち組と思われるようにするためにはどうすればよいのでしょうか。
筆者が海外生活をしていて「ああ、勝ち組だな」と思うような駐在妻の立ち振る舞いを紹介します。
ここで紹介するのは「旦那の立場」や「役職」は関係ない妻としての立ち振る舞いに焦点を当てています。
金銭管理はしっかりと行う
駐在妻に限らず奥さんの中には家庭の金銭管理を任されている人も多いのではないでしょうか。
駐在妻になる前は、妻自身も働いていたので夫婦別々の財布でも生活をしていくことができたかもしれません。
しかし、駐在妻となり旦那の稼ぎのみで生活をしていくようになるとこれまでと金銭管理が変わってきます。
特に海外生活をしているとお金の管理方法も変わってきます。具体的には
- 海外の口座と日本の口座の2つに給与が支給されるようになっている
- 海外にいながら日本で資産(住宅や車など)をもっている人はその維持費も支払わなければいけない
- 海外の口座にお金が不足した場合、日本の口座から送金する手続きをしなければいけない
- 通貨の関係から簡単に現金を引き出すことはできず、為替レートの変動によってももらえる現地の給与が変わってくる
- 手当の種類が複雑になり、支給されるもの、申請するものを理解しておく必要がある
筆者が旦那の口座を見るようになって気が付いたのはこれぐらいです。
私が「勝ち組だな」と思った駐在妻は、こうしたお金に関する知識が豊富で「財テク」も上手です。
いつも高価なブランドものや休みのたびに旅行に行っているような奥さんでも、普段の買い物は現地のスーパーや大量販売店を活用し、無駄をなくしています。
使う分だけを現金に換え、残りは、両替によって手数料がかからないクレジットカードを利用して決済するなど「上手なお金の使い方」の工夫をしています。
普段の買い物でも無駄なものを購入してごみを増やすのではなく、必要なものを購入し、使わないものは売却するなど本当に賢い生活をしていると感じます。
勝ち組っぽいような行動はしない真の勝ち組は誇らない
勝ち組だなという奥さんは「その雰囲気を見せびらかす」ようなことはしません。
決して「うちの旦那は勝ち組」なんてことは言わないですし、他の人を見下すような発言もしません。
その代わり、生活のメリハリがものすごくついています。例えば、多くのお客さんが来るようなパーティに出ていくときには、それなりの格好をしてきますし、ホームパーティをするときには普段とは違うおもてなしが出てきます。
この部分だけを見ると「キラキラした生活をしている」「セレブのような生活をしている」と思われるかもしれませんが、こうした行動はあくまで表向きの姿です。
普段お話をすれば、同じ駐在妻ですし、筆者自身とも同じような悩みを抱えています。
会社の関係、日本人会との関係でそれなりの立ち振る舞いをしなければいけないことにストレスを抱えている人も多いです。
海外では、日本と違って日本人同士のつながりが非常に深く、そこに会社の名前や役職が付くことによって、立ち位置が決まってきます。
日本であれば、旦那だけが意識をしていればよいようなことでも奥さん、さらにその子までも同じような目で見られることが多いのです。
現在も付き合いのある音楽関係の会社で役員をしている旦那の奥さんは、何も知らない人から見れば「勝ち組の駐在妻」と思われている人です。
しかし、その裏では日本人会のとりまとめをしたり、外部団体からイベントへの参加要請があれば知り合いに声をかけて人を集めたりと多大な苦労をしています。
それでも、「駐在生活はいろいろなことが学べて楽しいですよ」と話をしてくれ、筆者にも駐在生活のアドバイスやサポートをしてくれます。
普段移動するときも運転手付きの車で移動、買い物はお手伝いさんがやってくれるような生活をしているので「勝ち組だな」と思われるかもしれませんが、これも普段他のことで忙しい、安全面の配慮をしているあらわれです。
裏での活躍も知っている筆者にとっては、この奥さんこそ「真の勝ち組」と思っています。
子育てはビジョンをもって行う
3つ目に勝ち組だなと思う駐在妻は「長期的なビジョンをもって生活をしている駐在妻」です。
特に、子育ての考え方に対しては、明確なビジョンがある人とない人ではっきりと分かれます。
海外で子育てをしていくのはとても難しいです。特に子どもの進学に関しては、家庭の将来設計、子どものやりたいことなどを考えながら早めに準備をしておく必要があります。
この将来的なビジョンを子どもや旦那と共有し、行動できる駐在妻を筆者は勝ち組と思っています。
子どもの進学を考えて、日本に帰国する。日本で進学する予定の学校に関する情報を一時帰国するときに調べてくるなど先を見越して行動しています。
そのため、子どもが勉強に取り組む準備も速いですし、日本に帰ってから過ごす場所の確保などもできています。
ビジョンがしっかりとしている駐在妻は、全てにおいて余裕があり、ばたばたしているような感じがありません。
そのため、周囲から見ると優雅に過ごしているようにさえ見えます。しかし、その裏ではしっかりと準備がされており、素晴らしい妻だと感心してしまいます。
状況によっては日本への帰国も視野に
勝ち組だなと思う駐在妻の4つ目の特徴は「決断の思いっきりの良さ」です。
駐在妻生活をしていても、時には重たい判断をしなければいけないケースもあります。
前述の「子どもの進学」もその1つですし、親の介護などが日本で起こる場合もあります。そんなときには駐在妻生活を辞めて日本へ帰国するといった思い切った決断をする人も多いです。
特に日本への帰国は簡単ではなく、旦那を一人残して日本に戻るということは、日本に帰ってからも大変になることが想像つきます。
そんな状況であっても、自分のことではなく「子どものため」「家族のため」と思い切った決断をできる人は勝ち組の駐在妻です。
ただ、こうした判断をするときにも一人の独断では決めません。家族での話し合いはもちろんのこと、いろいろな方法を模索し、さらに周囲の先輩駐在妻がどのように対応したのかという情報までしっかり集めてから判断をします。
勝ち組だと思うのは、その判断力だけでなく情報収集も含めてです。
最近帰国された奥さまですが、お子さんの入試のために日本の学校をいくつも回って情報を集めていました。
しかも、集めた情報を日本人学校の補習校に提供し、その学校に通っている保護者から感謝される存在でした。
旦那様の仕事の都合で日本との往復が多い奥様でしたが、戻ってくるたびに最新情報を提供してくれ、アメリカに住んでいる保護者としてはとても助かりました。
こうした人のために動いてくださる方は現地でも「伝説の人」ということで名前が残ります。
そして、素晴らしい先輩駐在妻として、その後に赴任してきた人たちの参考事例になるのです。
帰国しても現地で名前が残るというのは名誉なことと言えます。
日本人としての誇りをもち現地に貢献する
現地に名前が残ることは名誉なことと前述しました。
駐在妻の中でも、現地で功績を残し帰国した人はやっぱり勝ち組と言えます。
名前の残し方は様々ですが、今筆者が住んでいるアメリカの街でも「勝ち組妻」として名前が残っているのは
- アメリカに日本で住んでいた県の県人会を立ち上げ、今でも活動をしている駐在妻
- 現地の学校でボランティアとして日本語を教えていた駐在妻
- 日本企業の誘致に旦那と一緒になって貢献した駐在妻
こんな人たちが素晴らしい奥さんだったとして帰国後も話題に上がります。
どの人も日本人としての誇りをもち、日本人だからできることを実行したまでで、本人たちは勝ち組とは思っていないと思います。
しかし、今住んでいる人にとって見ると現地社会に貢献し、日本として誇りに思うことができる「勝ち組の駐在妻」です。
勝ち組の奥さんは「本当にしっかりしている」
周りに勝ち組と思われている駐在妻の特徴は、「本当にしっかりとしている」という点です。
誰かに頼って生活をするのではなく、基本的には自分で切り開いていっています。
自分が大変であることは周りに見せることはなく、周囲への気配りにあふれています。
こうした行動が周囲からの尊敬を集め、結果的に「勝ち組」と思われています。
お金があれば「勝ち組」という人もいますが、海外にいると「一定水準以上のお金は持っている人」ばかりです。
したがって、お金ではなく周りにどれだけ貢献できるかといった功績や自分たちの将来設計をしっかりともっていて、実行できる駐在妻が勝ち組と周りからは見られます。