突然の夫の海外赴任に伴う駐在妻生活。筆者自身も少し前から覚悟をしていたものの、いざ海外赴任が決まるとやっぱりいろいろな思いがありました。
自分のこれまで積み上げてきたキャリアを捨てることになり、子育ての環境も大きく変わってしまうことに「駐在妻になることでよいことはあるのだろうか?」と自問自答したこともあります。
これから海外赴任をしなければいけない奥さんも同じような気持ちの人も多いのではないでしょうか。いろいろと情報を調べれば調べるほど、不安な気持ちになっている人も多いと思います。
しかし、実際に駐在妻として長年過ごすと、やっぱりメリットもたくさんあります。日本では経験できないこと、自分自身のスキルアップもできました。
そこで今回は、駐在妻生活をするメリット、そして最初はメリットになるかと思っていたのだけど、実際にはそこまでメリットにはならなかったということについて紹介します。
もくじ
駐在妻生活をして身についた3つのこと
駐在妻として長年海外生活を送ってきましたが、日本でそのまま生活をしていたら身につかなかったであろうと思うことが3つあります。
それは「語学に関するスキルアップ」「新しい考え方」「人間関係」です。
これら3つは、普通に日本で生活をしていたら身につけなかっただろうし、気づくこともなかったと思います。
新しいことをたくさん発見することができたのは駐在妻生活のおかげです。
語学に関するスキルアップ
駐在妻をやって、自分の能力で最もレベルアップしたものと言えば語学に関するスキルです。
筆者自身はアメリカとメキシコに長期駐在をしたおかげで英語とスペイン語に関するスキルを身につけることができました。
これから赴任をする予定の人も「語学に関するスキルは身につけることができるのでは」と思っている人も多いと思いますが、ある程度は確実に身につけることができます。
語学に関するスキルアップをしていくタイミングは
- 赴任する国が決まってから日本で自主的に勉強(本や英会話スクール、英語コーチングなど)をする
- 赴任後に、現地に住んでいることで自然に語学に関する能力が身につく
- 赴任後に家庭教師や現地のスクールに通ってスキルアップをする
語学に関するスキルアップは、同じ海外赴任をしたとしても「本人の努力」によって大きく変わります。
日本に帰ってからも通訳で役立つぐらいの力をもって帰るような人もいれば、単語が分かり少し話せる程度という人もいます。
そこで駐在妻経験が語学スキルのメリットと思えるようになるには、どうすればよいのかポイントを紹介します。
まず、日本である程度の学習をしてから赴任することです。
日本で全く学習せずに赴任してしまうと現地についてから話始めることができません。
そのうちに日本人のコミュニティとばかり接するようになり、現地の人と話をしなくても生活することができることを覚えてしまいます。これでは語学スキルを伸ばすことができません。
そこで日本の段階で参考書を利用したり、英会話スクールに通ったりしてある程度、英語に慣れておきましょう。
ここでは、英語の資格を取るほどの勉強をする必要はありません。
語学に対する抵抗感をなくし、ある程度の言葉が分かる、話せる程度になっていれば十分です。
赴任前は、非常に忙しくなかなか勉強する時間を取ることができない奥さんには「英語コーチング」もおすすめです。
自分の力量を診断してもらい、効率よく英語を勉強していくサポートをしてもらうことができます。
赴任してからある程度言語が分かるようになっていれば、抵抗感なく現地の人とコミュニケーションをとっていくことができます。
次に、現地において積極的に現地のコミュニティに参加しましょう。子どもの習い事や自分の趣味、ご近所付き合いなどを通して関わっていくと自然と話ができるようになってきます。
どうしても、日本人同士でいれば楽という気持ちはあるのですが、スキルを伸ばしたいのであれば片言であっても話してみるのが大切です。
最初はなかなか気持ちを伝えることができないかもしれませんが、時間が経ってくると出てくる言葉、聞き取ることができる言葉の量が増えていることを実感します。
最後に現地での学びの継続です。
駐在をすると現地にも英会話スクールや日本語と現地の言葉を話すことができる家庭教師から学ぶことができるケースもあります。
駐在妻が海外にいる間は、語学力を伸ばすことができる最高の環境にいます。
このときに、現状に満足せず、さらに学びを続けていけば語彙力を飛躍的に伸ばすことができます。
メリットと思うためには、人と同じぐらいのことができるのではいけません。
日本に帰ってから通訳の仕事ができる、英会話の講師ができる。英語検定で言えば準1級以上の英語力をもっているとなれば、語彙力を生かした新しい仕事をすることができる可能性もあります。
高いレベルにするために現地に行ってからも学びを継続していきましょう。
海外生活経験から得た新しい考え方
駐在妻のメリット2つ目が「海外生活経験をしたからこそ分かる新しい考え方」です。
海外で生活をしていると日本で生活しているときとは違う場面に多数出会います。
特に「相手の国ならでは文化や風習・考え方」は、よい刺激になる反面、従わないと生活をしていくことができない場合もあります。
筆者の場合、一番考え方が変わったのが「安全」に対する意識です。
日本で生活をしているとき、身の安全を守ることについてそんなに意識することはないかもしれません。
メキシコやアメリカに行くと治安に不安があるので、子ども一人で遊びに行かせることができない、学校は送り迎えをするといったことは安全への配慮からやらなければいけないと思っていました。
しかし、実際に赴任をしてみると日本人が考えなければいけない安全に対する意識はこの程度ではありませんでした。
一例ですが
- 流しのタクシーは利用禁止、公共交通機関のバスや地下鉄の利用も極力控える
- 24時間有人警備員がいるマンションまたはアパートに居住
- お金をもっていることを匂わせるような服装、アクセサリーなどを普段使わない
このようなことを先輩の駐在妻から聞いて驚きました。
ただ、上記の例は、守らなかったことにより実際に被害があったという経験から生まれているものなので、改めて海外で生活をする際に「安全」に関しては意識しなければいけないことを感じました。
こうした海外の考え方に触れることは、今まで意識しなかった知見を広めてくれるきっかけにもなりました。
その国の置かれている状況や環境をよく考え、「命」を一番大事に行動するにはどうすればよいのか。
こんな思考力を身につけることができたのは駐在妻として生活するメリットだと思います。
日本ではできない新しい人間関係
駐在妻生活をする3つ目のメリットが「新しい人間関係」です。
日本で生活をしているときには正社員として働いていたので、友達関係と言っても仕事の仲間が多く、奥さんたちのつながりと言えば、住んでいる場所のご近所さんや当時娘が通っていた幼稚園の保護者ぐらいである程度固まった人間関係の中で生活をしていました。
しかし、駐在妻になると関わる人の範囲が大きく変わります。
はじめは、旦那と同じ会社に勤めている奥さんとつながり、次に現地で入園した長女の保護者とつながっていきます。
すると、どんどん横に関係が広がっていきます。
幼稚園の保護者は、日本人だけでなく現地の奥さんもたくさんいます。
新しく入ってきた奥さんは、相手もどんな人だろうと興味津々で話しかけてきますので、話に乗っていれば自然と現地の奥さんのネットワークに入ることができます。
また、駐在をしている国や場所にもよりますが、「日本人会」のようなものがあります。
メキシコに駐在をしていた時の話ですが、メキシコと日本は古くから関係のあるお国柄なので現地には大きな日本人会がありました。
日本人会では、新しく赴任してきた人を歓迎したり、春や秋にお祭りのイベントを開催したりと、現地に住んでいる駐在員、日系の人に対してたくさんの支援を行っています。
ここを支えているのは現地に古くから住んでいる日系人や駐在員として働いている人、その家族です。
筆者もこの会にボランティアとして参加をしていましたが、いろいろな企業の奥様と知り合うことができました。
中には大使館職員の奥さん、現地で永住をする覚悟をしている奥さんなど、日本で生活をしていては絶対に出会うことができない人とお友達になることができました。
この関係はアメリカに異動してからもその関係が続いており、日本に一時帰国するときには再会することもしばしばあります。
旅行に行きやすい(長期的なバカンス)
4つ目の駐在妻のメリットは「旅行に行きやすい」という点です。
これはセレブな生活をすることができるという意味ではありません。旅行に行きやすい理由は2つあります。
1つは「長期休暇が多い」という点です。海外の企業では「夏休み休暇」「クリスマス休暇」を取得するのが当たり前であり、日本企業も現地の休みに合わせて休暇を設定しています。
夏休み休暇は2週間程度、長いところでは1か月もあります。
また、クリスマス休暇についても同じような感じで設定されています。
日本の会社に勤めている頃に比べれば、長期休暇が取得しやすい状況にあり、海外では年次休暇も完全消化することが当たり前の文化です。
現地の学校や日本人学校も夏休みに出校日などはなく、子どもも長い休みがとりやすい状況にあるので旅行にはとても行きやすいのが駐在妻生活のメリットです。
休みの過ごし方も日本とは大きく異なり
- アメリカやメキシコの観光にあるサマースクールに通う
- ホテルに宿泊するのではなく、アパートのようなものを借りて長期滞在する
- 会社の保有している別荘(借り上げホテル)に滞在する
このように日本の休みの過ごし方とは全く違う「海外の休み」を経験することができるのは大きなメリットです。
ただ、駐在妻生活をしていると長期休暇は遊んでばかりはいられません。
この休暇を利用して日本に帰る(一時帰国する)人もたくさんいます。一時帰国の目的は様々ですが
- 子どもの進学に向けて学校の情報を集めてくる
- 海外では購入できないような食料品、学用品を購入する
- 健康診断や運転免許の更新といった手続きを行ってくる
このようなことをしてくる人が多いです。
旅行に行きやすいと聞くと「楽しそう」と思っている人も多いかもしれませんが、この期間にしかできないことをやらなければ、日本に帰国したときに困るという事情もあります。
もう1つの理由は「日中空いている時間が多い」という点です。
子どもが学校に行ってしまえば、帰ってくるまでの時間は自由になります。
この時間帯を利用して小旅行をしてみたり、同じ駐在妻同士で1泊2日の旅行に行ったりすることもよくあります。
しかし、この旅行も完全に遊びというわけではなく事情があります。
メキシコに駐在しているときの話ですが、筆者が住んでいたのは首都から車で4時間ほどかかる工業都市でした。
日系の企業が多く進出しているものの日本食材を含めてアジア系の食材を販売しているお店の数は限られており、料理に使う出汁やカレー粉といったものは首都の日本食材店まで購入に行かなければいけませんでした。
そこで同じ駐在妻同士で協力をして首都への買い出しツアーを計画し、周囲の駐在妻にほしいものを聞いて買い出しに行っていました。
これも駐在妻生活あるあるですが、周囲で一緒に支え合っていかなければ生活が立ち行かない部分もあります。
このように駐在妻生活をすると日本では味わうことができない旅行、休みの過ごし方をすることができます。
ただし、完全にお遊びではなく、旅行をするときには何らかの目的があり、目的が日常生活にも関わってくることを覚えておくとよいです。
日本の良さを再認識できる
5つ目のメリットは「日本の良さを再認識できる」という点です。
日本に一時帰国して現地に帰ってくると必ず思うのが「日本はいい国だったな」ということです。
これは多くの駐在妻が語ることになります。
日本に本帰国した駐在妻と話をすると「海外生活の不自由さに比べたら日本の生活で困ることなんて大したことない」という人も多いです。
筆者がアメリカで実感するのは「日本人の時間に対する正確性」と「綿密な計画性」の2つです。
日本では鉄道にしてもバスにしてもほぼ時刻表通りにやってきます。2分でも遅れればお詫びの対象になるぐらいで、集合をするときにも5分前にはみんな集まっているというのが当たり前の文化です。
しかし、アメリカのバスや鉄道では5分程度の遅れは誤差の範囲内、15分遅れてもお詫びはありません。
遅れてくるのであればよいのですが、早くやってきて定刻の前にはすでに出発しているなんてこともあります。
ニューヨークやロサンゼルスルのような大都市であればたくさんのバスがありますが、少しでも田舎に行くとバスの数は急激に少なくなり、1本乗り過ごすと大変なことになります。
そのため、現地の運転免許を取って自家用車を購入して運転するか、早めに準備して出ていくしか対応策はありません。
緻密な計画性も海外の人は苦手です。
日本人は事前に計画を立て、その計画を周知してから行動します。
そのため、見通しが立ちやすく動きやすいです。一方で、海外では「計画を立てる」ということを苦手としている人が多いです。
一例ですが、メキシコでは「給料日が月に2回」設定している企業が多いです。
これは、1回で渡すと全てを使い切ってしまう国民性であることから実施されている方法です。
どこかにお金を貯めておいて計画的に使おうとする考え方があまりないので、ATMにお金を預ける機能がない、クレジットカード(後払い)ではなくデビットカード(会計後、即引き落とし)の発行数が圧倒的に多い国です。
このような海外での実情を見ているとやっぱり日本はすごいと思いますし、安心・安全に暮らせる日本のよさを実感することになります。
メリットと思っていたがそうでもなかったこと
次に紹介するのは、日本を出発する前は「メリットになる」と思っていたのですが、実際に駐在妻生活を始めると「そこまでメリットにはならなかった」と思うことを紹介します。
自由な時間とセレブな生活
駐在妻になると専業主婦になるので自由な時間が多く、海外赴任手当や家族手当もあるのでリッチな生活をすることができると思っている人もいるかもしれません。筆者も海外赴任が始め決まったときにはそんな思いもありました。
しかし、時間の面でいえば、日本なら周りがやってくれること、また、子ども一人でできるようなことでも親が関わらないと安全上よくないケースが多数あります。
そのため、日本で生活をしているときに比べれば仕事を辞めたので自由時間が増えましたが、すごく楽になったかと言われるとそこまで楽になったとは感じません。
多少自由に動くことができるようになったかなという感覚です。
また、お金に関して言えば、確かに赴任手当などの諸手当があります。
しかし、家計全体の収入で言えば日本で生活をしているときとほぼ同等です。
さらに最近では歴史的な円高、アメリカの物価上昇が激しく、これならば日本で生活をしていたときの方が楽ではないかと思うようになりました。
トイレットペーパー10個入りを購入して1000円近い出費になるのは、いかに収入が多くても海外で生活をするのは苦しいです。
子どもの成長に関して
もう1つは、子どもの成長に関してです。海外で生活をしていれば、子どもの英語力が伸び、国際的な感覚が身につくのではと期待している人も多いと思います。
筆者も同じようなことを思い描いていました。確かに、同世代に比べれば英語力が高いのは親の眼から見ても分かります。
しかし、いろいろな物事の感覚が海外慣れしているため、最近では、この後、日本に戻ったら生活をしていくことができるのだろうかと不安になることも多いです。
日本の文化や風習に触れてこなかったことが将来的に良い方向に向くのか、悪い方向に向くのか、子どもが大きくなってくるにしたがって、海外生活がメリットとなったのかどうか不安に感じることもあります。
まとめ
ここまで駐在妻生活のメリットについて紹介しました。
語学力を伸ばすことができ、将来的な自分のスキルアップにつながる力を手に入れることができたのは大きなメリットです。
また、海外に住むことで改めて日本の良さにも気づかされました。
こんな経験は海外生活でしか得ることができない貴重な経験なのでメリットと言えると思います。