もくじ
赴任中にキャリアップする人も多数
駐在妻として海外赴任をしている奥さんの中には、日本で積み上げてきたキャリアを捨てて赴任している人も多いのではないでしょうか。これまでバリバリで仕事をしていたのに旦那様の赴任に合わせて、休職または退職を選択した奥さんもいると思います。
そんな駐在妻のキャリアはこれで終わりなのでしょうか。
そんなことはありません。駐在妻の中には、駐在中に日本で積み上げてきたキャリアをアップさせたり、新しいキャリアを始めたりする人がいます。
今回は、そんな駐在妻のキャリア事情について紹介していきます。
海外赴任前のキャリアを生かす
はじめに駐在妻のキャリアについて考えるときには
- ① 赴任する前のキャリアを活かす
- ② 赴任後にキャリアを作る
大きく①と②に分かれます。
駐在前にやっていたことが気に入っていた、または、休職制度を利用して駐在妻となっている人は、赴任前のキャリアを生かしたほうが勉強時間や経済的な負担は小さいです。
そこではじめに、赴任前のキャリアを生かしていくという考え方を紹介します。
赴任前に自分のキャリアについて考える
駐在妻のキャリアを考える上で、まず知っておかなければいけないのが、ある程度の方向性を赴任前に考えておくということです。
理由は、赴任した後では新しい情報を仕入れることができる範囲が限られます。自分のキャリアを帰国後にどうしていくのかは、赴任前から考えることを意識しましょう。
しかし、駐在妻がキャリアを考える最初のきっかけになるのは結婚するときかもしれません。結婚するときには当然相手の職業を聞くことになると思いますが、海外赴任しやすいような仕事についているのであれば、将来的に海外赴任があると覚悟をする必要があります。
外交官と結婚するのであれば、将来の駐在生活の可能性は高くなります。自分の望んている将来像に合った方と結婚することが重要になるでしょう。
次にキャリアを考えるきっかけになるのが、海外転勤話が出てきたときです。海外赴任は国内の転勤とは違い、いきなり「行ってこい」と言われることはまずありません。
赴任の手続き、海外での生活準備を考えて概ね半年ぐらい前には話が出てきます。この時点で仕事をしているのであれば、海外赴任に伴って自分(妻)自身がどうしていきたいのか考えましょう。
筆者は、元々医療系に勤務しており、正社員として働いていましたが、旦那の予想していなかった海外赴任の話を受けて、自分のキャリアについて考えました。
両親や同僚などと相談し、資格があるので帰国後も再度働くことができる可能性が高いことを受けて退職の道を選びました。
休職制度を利用しているなら自分の力量アップに
駐在妻となるときに会社によっては、配偶者同行制度のようなものがあり、退職ではなく「休職扱い」として帯同することができる制度を整えている会社もあると思います。
どちらかというと大企業や公務員関係の仕事についている奥さんであれば、同行制度を利用できる可能性は高いのではないでしょうか。
もし、休職制度が利用できるのであれば、駐在妻生活中は自分の力量アップをすることができるチャンスでもあります。
なぜ、力量アップのチャンスになるのかというと駐在妻生活中は、自分の時間を作りやすいからです。
もちろん、海外での生活は楽とは言えません、しかし、フルタイムで働いていた人であれば、日本よりは自分の時間を作りやすいはずです。この時間を余暇として過ごすこともできますし、自分のスキルアップのために使うこともできます。
例えば、現在自分がやっていることに関係する知識を専門的なものにアップデートしたいのであれば、本やインターネットを使って勉強する時間が確保できます。
勉強するための書籍は日本で購入して持参をしていくか、現地で購入することができます。近年は、インターネットを利用すると赴任先でも日本の書籍は手に入れることができる場所が多いので、よほどの僻地へ赴任にならない限り現地調達も可能です。
近年、人気になっている通信教育(オンラインによる資格取得)も海外で受講可能です。
日本では忙しくて、オンライン講座で勉強することができなかったという人は赴任中の期間は勉強しやすいときになります。
少し難しいのが「資格」に関することで、オンライン講座であっても資格試験だけは日本でないと受講できないものもあります。講座を受講する前に試験がどのように行われるのかはしっかりと確認しておきましょう。
どうしても日本でなければ受験できないようなものであれば、その期間だけ日本一時帰国するという方法もあります。
このように、駐在妻の期間中は勉強する時間を確保しやすい状況になるので、在宅でスキルアップはしやすくなります。
帰国後のキャリアはパートナーとしっかり相談
帰国した後に、自分のキャリアをどうしていきたいのか、赴任前にパートナーとしっかり相談しておきましょう。特に確認しておきたいのが次の点です。
- ① 赴任期間が決まっているのかどうか
- ② 帰国後は元の場所に戻ることができるのか
①の赴任期間に関しては休職制度を利用する人にとってみると「休職期間」とも関わってきます。
一番困るのは「赴任期間が決まっていない」というパターンで、この場合、休職制度を使うことが難しくなります。一度退職という選択肢を取ることが多くなるので、駐在妻自身のキャリアについては考え直さなければいけません。「3年で帰国」というように期間が決まっているのであれば、その間にキャリアップを考えればよいので見通しが立ちやすくなります。
②の帰国後の生活場所についてもキャリアに大きな影響を与えます。自分の住んでいた場所に戻ってくることができる場合は、キャリアへの見通しが立ちますが国内の違う場所に転居する可能性がある場合には、赴任前に積み上げてきたキャリアをあきらめなければいけないケースもあります。
旦那さんの会社の事情によって大きく変わりますので、確認できるのであれば事前に調べておきましょう。
赴任期間にキャリアについて考える
駐在妻にとって赴任期間は、自分の今後のキャリアを考えるよい機会になるととらえましょう。
そこで、筆者の周りでどのような考えをもつ人がいたのか実例を挙げながら紹介していきます。
復職してこれまでのキャリアを活かす
赴任が終わったら復職をして、これまでのキャリアを生かしたい場合には、自分の仕事に関わる勉強を増やしていくのが良いです。
駐在妻になれば、日本で仕事をしている時よりも時間を取ることができますので、勉強をして知識を増やすことはやりやすいはずです。
一方で、キャリアアップしにくいのが技能に関することで、実技的な経験値を積むような仕事の場合には、どうしてもキャリアアップしにくくなります。
新しいキャリアを駐在中に構築する
駐在妻の中でも多いキャリアの構築の仕方が、駐在中に新しいキャリアを身につけてしまうという方法です。
前述したとおり、駐在妻になるために一度仕事を辞めている人が多く、帰国する時期や場所もはっきりとしないために、これまで培ってきたものを継続するよりも新しい自分のやりたいことを見つける方が早いと考える人もいます。
今はインターネットが普及をしたため、通信教育がとても受けやすい状況にあります。大学さえも通信で海外から通い、卒業することもできる時代です。
新しい勉強をすることができる条件はそろっているので、自分がやりたいと思ったことを再構築することはしやすい状況にあります。
駐在妻が獲得しやすい新しいキャリア
では、新しいキャリアを積み上げるといっても駐在妻にとって積み上げやすいキャリアはどんなものがあるのでしょうか。
多くの人が真っ先に思いつくのが「語学に関するスキル」を身につけてのキャリアアップだと思います。確かに、語学のスキルはとても身につけやすい環境にありますし、身につけた分だけ自分の生活も楽になります。
アメリカに駐在している奥さんの中にも、赴任する前から語学の学習を始めて、赴任後も語学学校に通ったり、家庭教師を付けたりして語学スキルを高めている人がいます。
その方は、元々語学とは全く関係のない仕事をしていましたが、駐在して3年も経過してくると日常の英会話だけでなく、ビジネスシーンで通訳をすることができるレベルまで能力を高めました。
お話をしていると日本に帰国した後は、英会話の講師をしたり、現在、通訳の仕事をしている企業の案件をそのまま継続したりしながら新しいキャリアを作り上げていると話していました。
駐在をしていれば、語学に関するスキルは身につけやすいだけでなく、自分の生活にも恩恵として跳ね返ってきます。生活を楽にでき、さらに自分の新しいキャリアへの道も拓くことができるのが語学スキルのアップかもしれません。
2つ目が、通信教育で取ることができる資格に関するキャリアです。
インターネット環境さえあれば、勉強して資格を取得できるものがたくさんあります。そして、勉強の入り口となるオンラインスクールもあります。
代表例としては
【公式サイト】https://studying.jp/
【取得可能な資格例】
・危険物取扱者・メンタルヘルス・ITパスポート・基本情報技術者・司法書士・行政書士
・社労保険労務士・弁理士・看護師国家試験・登録販売者など
【公式サイト】https://formie.net/
【取得可能な資格例】
・チーズソムリエ・スムージースペシャリスト・野菜&果物コンシェルジュ
・薬膳漢方マイスター・整体&セラピースペシャリスト・アーユルヴェーダマイスター
・心理カウンセリングスペシャリスト・メンタルトレーニングスペシャリスト
2社を代表としてあげましたが、他にもオンラインスクールはたくさんあります。
2社を紹介した理由は、筆者の周りで利用し、実際に海外で資格を取得したという人がいるためです。
オンラインスクールによって、取得できる資格に違いがあるので、今後のキャリアを考えてスクールを選択するようにしましょう。
キャリアアップしたいなら自分から外に出てみよう
ここまで紹介したのは駐在妻が在宅でできるキャリアアップが多かったのですが、実は、外に出てみると意外とキャリアアップにつながることがあるケースもあります。
駐在妻として生活をしているとふとしたことから、自分がこれまでやってきたキャリアを必要とされるケースがあるのです。
筆者の経験ですが、日本では医療系の仕事をしていました。駐在妻となって1年が過ぎたころ、筆者の経歴をある学校の職員が目に留めました。その学校は日本人の子弟がよく通う現地学校だったのですが、日本でいう養護教諭がおらず体調不良者やちょっとした怪我の際に対応できるスタッフがいないという事情でした。
そこで、医療系勤務経験のある筆者のところに連絡があり、臨時的任用という形で働くことになりました。学校で勤務するのは初めてでしたが、子どもとの接し方、また保護者への連絡、その後のケアの情報提供など、今まで自分がやってきたキャリアを十分に生かすことができました。
さらに、これまでの経験では気が付くことができなかった患者さんやその家族の思いに触れることができ、とてもよい経験を1年ほど送ることができました。
他にも美容師をやっていた人が、その腕を見込まれて現地の美容院で日本人向けの専属カット担当をしたり、飲食店経験のある人が現地飲食店で働いたりと、これまでのキャリアで得てきたことを現地で評価され、採用、そして自分自身もスキルアップできたというのはよく聞く話です。
では、どのようにしたらこんなスキルアップができるのでしょうか。
ポイントになるのは、自分のできるスキルを周りに公開することです。
海外には、日本人会や日系の商工会議所のようなものがあります。海外で働きたい人向けに求人情報を取りまとめているようなところですが、こうしたところで求人情報を探してみると、意外と自分のスキルに関係した仕事を見つけることができるかもしれません。
そして、仕事の内容が自分のキャリアと関係しているのであれば、積極的に応募してみるのもよい方法です。特に日本人会は強い横のつながりをもっているので、仕事探しをするのであればコネクションを作っておくのがよいでしょう。
現地の人や会社から自分のキャリアに注目され、求められるようであれば、キャリアアップの1つと考えて参加するのも面白いです。
海外で自分のキャリアを生かせるような仕事をすることができれば、キャリアアップにつながることが多いです。文化や習慣の異なる場所では、日本と同じ仕事をすることはやりにくく、工夫をしなければいけなくなります。この工夫が大きな経験値になります。
また、日本に帰った後も自分のキャリアのアピール材料になります。このあとで、実際にキャリアアップした方の事例を紹介しますが、海外での経験が大きく影響していることが分かります。
先輩駐在妻の実例
最後に筆者のこれまで出会った駐在妻の中で、日本で積み上げてきたキャリアを駐在生活中にレベルアップして基本に帰国後活躍している人と、駐在妻になったことでこれまでのキャリアを捨て、駐在生活中に身につけたものを使って日本に帰国後活躍をしている2人を紹介します。
日本のキャリアを活かして駐在中も活躍そのまま帰国後も復職へ
一人目は、日本で公立小学校の教員として活躍をしていた駐在妻です。
旦那さんの仕事の関係で休職をして駐在妻となりました。アメリカには日本人学校が少なく、日本企業に勤める人たちの子どもは現地の幼稚園に通っています。
しかし、言葉の違いもあってなかなか幼稚園にいけない子どものために、教員の経験がある奥さんが現地採用職員として働き始めました。
幼稚園教諭の教員免許のない方でしたが、独学で勉強され、元々小学校で勤務していたこともあり、子どもの扱いや保護者対応も上手い方で多くの人から感謝されました。旦那さんの3年間の任期を終えて帰国した後、復職し日本の学校で活躍をされています。
帰国後は、駐在妻時代に経験したことを在籍している自治体の講演会で先生方向けに話をしたり、国際理解教育に力を入れて取り組んだりしているようです。
現在は、学校の先生を束ねる教務主任の立場となり仕事をされていますが、海外での経験が自分の見識を広げる貴重な経験となったと言っています。
駐在中に新しいキャリアへの道を拓いた奥さん
二人目は、日本にいた頃はお子さんが小さかったこともあって専業主婦として生活をしており、その前は大手家電量販店の販売員をされていた方です。
この方は駐在妻となり、子どもも学校に通っている時に時間に余裕ができました。そこで、海外にいながら少しでも自分の力でお金を稼ぐことができないかと、在宅の仕事を始められました。
最初は、簡単なパソコン操作でできる仕事だったのですが、より高度なパソコン操作ができれば高い報酬を得ることができることが分かり、パソコンソフトに関する勉強をされ、情報系の資格をオンラインスクールで取得していました。
駐在5年目になり、現在でもアメリカで生活をされていますが、日本からオンラインで仕事の依頼を受けて在宅で働かれています。
また、その腕を見込まれて、現地の日本人会からも仕事を依頼されることがあり、赴任前とは全く違うキャリアを始めて、今は新しいキャリアで仕事をされています。
このように駐在妻となってもキャリアアップをしていくことは可能です。日本の仕事から一旦離れるので、この機会に新しいキャリアに挑戦する人もたくさんいます。
2人に共通しているのは、自分でできることを見つけて積極的に行動していることです。行動してみると自分の能力を求めてくれる場所や人に出会えるかもしれません。
まとめ
ここまで駐在妻のキャリアについてまとめました。駐在妻となってもこれまでのキャリアを諦める必要はありません。
逆に、海外で過ごすという貴重な経験をしたことがプラスとなって、キャリアアップも可能になるかもしれません。
これまで積み上げてきたものがあれば、ぜひ周囲の人に知ってもらい駐在妻生活だからこそ上乗せできるキャリアを積み上げることができれば、日本に帰った後大きな武器になるでしょう。