駐在妻となった先輩方が、駐在中に困ることとして挙げるものに「コミュニティ」があります。
コミュニティとは、文字通り人と人とのつながりですが、駐在をしていると現地の人とのつながり以外にも、日本人コミュニティのつながりがあります。
日本人コミュニティのつながりは、メリットもありますが、ここでの人のつながりがストレスになるというデメリットもあります。
コミュニティに関しては駐在する夫以上に、妻がかかわることが深く、上手に付き合っていくことが大切になります。
もくじ
日本人会でコミュニティを作る
海外に行くと、既に日本人が多く住んでいたり、日本とのつながりの歴史が深かったりする国や都市では、「日本人会」という組織があります。
この組織は、現地の法人企業や永住者が中心となって作られた組織で、現地に住んでいる人、現地に進出した企業をサポートするような役割があります。
赴任した夫の会社が、日本人会と何らかの関係がある場合には、そのまま会員となるのが恒例となっています。
日本人同士のつながり
日本人会は日本人同士のつながりを作ることができるように組織されています。
そのため、お祭りなどのイベントや企業同士のスポーツ交流会、大使館などと協力をして現地への要人訪問の際に支援するなど様々な役割を果たしています。
海外赴任してきた人へのサポートも実施しており、居住地の紹介やトラブル時の法律相談、言葉が不慣れなうちは現地語のサポートを実施してくれます。
いろいろな情報を知ることができる
日本人会に所属をするとさまざまな情報を得ることができます。
特に大きいのが現地の最新情報を知ることができる点です。国によって情勢は様々ですが、安全に関する情報は誰しもがほしいものです。
日本人会では現地の最新情報を仕入れ、発信してくれるので大使館からの情報と同じぐらい大切になります。
また、日本の行事に絡むイベントも多く開催され、日本食材の販売やお店の紹介など、新しく駐在妻になった人に現地の日本人がよく利用する生活事情を教えてくれます。
会社によっては強制参加公官庁の人が多く所属
日本人会は前述したように、会を運営する企業となっている場合、原則的に参加することになります。
大きな企業が支出していることが多く、他にも大使館などの公官庁、日本人学校などが運営母体になっていることがあります。そのため、働いている会社が日本人会の運営に関わっているのであれば、原則参加になります。
日本人会のコミュニティに所属するメリット
日本人会に駐在妻が所属するメリットは、いろいろな情報を手に入れることができる点です。
特に赴任直後は言語に関する不安や習慣に関する知識不足もあり、何かと心配事が多くなります。そんなときに、日本人会があればサポートをしてくれます。
日本人会に所属をすると、その会が発行しているパンフレットを受け取ることができ、中には医療機関の情報やお得な情報が掲載されています。日本でインターネット検索をしても探すことができない生の情報が手に入ります。
また、現地での人間関係作りにも役立ちます。駐在妻になると、現地でいろいろな人と話をすることになります。
夫と同じ会社に勤めている駐在妻、近所の日本人、お子さんがいる場合には現地の学校の保護者の関係を作らなければいけません。日本人会に所属している人であれば、何度も顔を合わせることになるので人間関係も作りやすくなります。
駐在妻が日本人会をデメリットに感じる部分は
現地で大いに助けてくれる日本人会ですが、これを大きな負担と感じ、ストレスにさえもなっている駐在妻も多くいます。
なぜ、そのようになってしまうのでしょうか。ストレスになってしまう点の1つ目が、ほぼ強制参加のような状態になっているところです。
前述した日本人会の運営に関わっている企業の場合、妻は強制的に日本人会に参加しなければいけなくなります。
当然、当番制のようなものがあり、広報誌の作成やイベントの手伝いなど仕事が割り振られてきます。1年目は、様々なサポートを受けることができる立場ですが、2年目以降になると自分たちがその役を担うことになるので、仕事が増え、それがストレスになりやすいです。
2つ目のデメリットとして人間関係が密になりすぎる点です。
日本人会に所属すれば、それだけ多くの人と話をすることになります。人間関係が密になれば様々な話をすることになりますが、中にはプライベートなことにまで踏み込んだ話になり、それが広まるのもコミュニティのデメリットです。
家族でお出かけした場所、家族の予定などが周囲に広がっていることも多く、プライベートと公的な場の使い分けを上手にしないと周囲から思わぬうわさ話を聞くことになることもあります。
3つ目がマウンティングです。実際に私も日本人会に所属していますが、駐在妻の間にも人間関係のマウンティングが生まれます。
マウンティングのきっかけになるのは駐在の年数であったり、夫の職場の上限関係であったりが要因ですが、夫や自分たちの立ち位置を意識して話や行動をしなければいけません。気を遣うことが多く、多くの人が集まるようなイベントでは、参加することで疲れてしまい、ストレスに感じることも多いです。
日本人会がないところにも小さな組織がある
日本人会がないような地域でも日本人同士のコミュニティはたくさんあります。
私の住んでいる北米においても、進出している日系企業で日本人同士のつながりを持つコミュニティを作っている場所はたくさんあります。
それぞれのコミュニティの運営資金は、駐在している人や企業が拠出していることが多く、運営も現地に住んでいる人によって行われます。夫も妻もボランティアとして、コミュニティに関わることは多くなりますが、自分たちもその組織によって助けられてきたということを意識しましょう。
コミュニティとつながりを持っておくといざというときに本当に助けになります。付き合い方にストレスを感じることもありますが、日本で近所付き合いをするときと同じように過ごしていれば問題ありません。
海外では、ボランティア精神やチップ文化が浸透しています。人を助けることは美徳という文化のところもあるので、文化的な背景まで考えて人付き合いをすると失敗しません。
近年存在感を示すオンラインコミュニティ
日本人会など、現地に行ってからサポートをしてくれたり、情報を知ったりすることができるコミュニティが昔からある一方で、近年存在感を増しているコミュニティが「オンラインコミュニティ」と呼ばれているものです。
オンラインコミュニティとはどのようなもので、どんなメリットがあるのか紹介していきます。
オンラインコミュニティってどんなもの
オンラインコミュニティとは、駐在員や駐在妻がインターネット上で参加することができるコミュニティで、オンライン上の情報交換の場と考えればよいです。
参加をしているのは、実際に駐在として働いている人やその妻、これから駐在になる予定である人、かつてその国に駐在をしていた人などが参加していて、現地の情報を発信したり、質問に答えてくれたりするコミュニティです。
SNSやビデオ会議システムを利用して、参加者同士をつなぎ、話をすることができる場を設けているコミュニティもあります。
駐在する人向けのオンラインコミュニティサービスはいくつかありますが、駐在妻に限定してサービスを提供しているサイトとしては
- 【代表例】
- 駐妻キャリアnet
- 駐妻Cafe
- 世界のママが集まるオンラインカフェ
などが代表として挙げられます。
これらのオンラインコミュニティは、全世界に駐在する人や妻を対象にしていますが、特定の国や地域に絞ってオンラインコミュニティを展開しているサイトもあります。
など
サイトによって充実具合にばらつきがあるので、情報量や更新状態を見ながら、どのサイトを利用するのが良いか見極める必要があります。
オンラインコミュニティのメリット情報編
駐在員に関するオンラインコミュニティを利用する人が増えているのにはいくつかの理由があります。そこで情報編と人間関係に分けて紹介します。
オンラインコミュニティを利用するメリットの1つ目が早い段階から情報を得ることができる点です。
駐在する妻が情報を知りたいのは赴任してばかりではありません。私は赴任する前が一番不安でした。同じことを思っている人も多いのではないでしょうか。
慣れない土地への赴任、手続き上の煩雑さなど、赴任する前も不安になるようなことは多くあります。しかし、この時期は、現地の人と情報を交換できるネットワークがないので、自分で解決していくしかありません。
そんなとき、オンラインコミュニティが大きな力になります。コミュニティ内には、すでに赴任している、または赴任したことがある経験者が数多くおり、赴任前から相談に乗ってもらうことができます。
駐在をする夫は、仕事の連絡を含めて現地の人と情報交換をすることがありますが、妻には、情報交換をするネットワークがありません。オンラインコミュニティであれば、妻の情報交換ネットワークを作ることができます。
オンラインコミュニティで作る人間関係
オンラインコミュニティは人間関係作りでも有効です。
前述した日本人会は大きな国のそれも主要都市と言われるところにしかありません。例えばアメリカでいえば、ニューヨークやロサンゼルスなどには日本人会がありますが地方都市に行くとなくなります。
これは、アメリカに限った話ではなく、日系企業が多く進出しているのに日本人会がないというのも多いです。そんなところに駐在妻として赴任をすると、人間関係作りの段階から苦労することになります。
オンラインコミュニティであれば、同じ国に住んでいる人同士で仲間を作り情報交換をすることができます。
対面ではなく、オンラインなので遠く離れていても情報交換をすることができますし、ここ最近の新型ウイルスに伴う情勢を考えれば、対面で話をするよりもオンラインで情報交換をすることができたほうが安心と思う人も多いのではないでしょうか。仲間が少ない場所であっても人とのつながりを作れるメリットがあります。
オンラインコミュニティのデメリットは
では、オンラインコミュニティにデメリットはないのかというとあります。
まず、特定の人たちと話を多くするようになれば、密なコミュニティが出来上がりますので、どうしてもプライベートと公的な場の話と切り分けて話をしなければいけません。
オンラインだからと言って安心しているとどこで人間関係がつながるのか分からないので要注意です。特に駐在の場合、絶対的に人数が少ないので苗字と居住地、会社が分かれば個人情報が特定されるぐらいの覚悟はしておきましょう。
情報が拡散しやすく、スピードが早いのがオンラインコミュニティのデメリットです。
2つ目のデメリットとして情報の信頼性です。
実際に生活した人と話をすることができればよいのですが、経験談やレポートに関しては情報の内容に疑問符が付くものもあります。間違っていなくても、ある地域限定の情報が掲載されていることもあるので、他の情報源の話と絡めて確認することが大切です。
おすすめのオンラインコミュニティ
オンラインコミュニティはいくつかありますが、サイトによって内容が特化されています。
その中でもおすすめの3サイトを紹介します。
駐妻キャリアnet
駐在妻のキャリアに関する情報が豊富
「キャリアを継続したい駐妻と企業をつなぐ活動を強化し、人材紹介会社と業務提携、副業プログラム、時差をいかした仕事の創出」とアピールしていることから、駐在する妻の仕事に関する情報が豊富。
駐妻café
地域ごとの情報を探すことができる。
子育てや教育に関連する情報が多く、国や地域ごとに簡単に情報を探すことができる。
せかままcafe
Facebookのグループから生まれたサイト。「おしゃべり会」を開催しており、情報交換を中心に話ができる。
上記のサイトは駐在妻の間でよく知られているオンラインコミュニティです。どのサイトが一番というのは決めにくく、それぞれのサイトに強みがあります。
例えば「駐妻キャリアnet」は駐在妻のキャリアに特化したサイトで、現地で仕事を探す場合や仕事をするにあたって必要な手続きなどの情報が豊富です。
駐妻キャリアnetでは、不定期に駐在妻に向けた有益なイベントを開催しています。2021年には、日本語や英語での面接セミナーを開催しており、現地で就職をしたい人のサポートをしています。
サイトそれぞれに特徴があるので、自分がどのような情報がほしいのかを考えてサイトを利用するのがオススメです。
駐在妻のコミュニティに関する心得
駐在妻のコミュニティにおける役割は、とても大きいものです。
上手にコミュニティに入っていくことができればよいのですが、入口のところでつまずいてしまうと取り返すのに非常に時間がかかります。そこで心得として
- 謙虚な気持ちで接していくこと
- コミュニティの人間関係をしっかりと把握すること
- 連絡は緊密に取るが公私の区別ははっきりとつけること
私も駐在として数年過ごしてきましたが、この3つが対面であってもオンラインであってもとても大切だと感じます。
はっきり言って海外で駐在している人の報酬は、日本で生活をしているときよりも差が大きいです。
そのため同じコミュニティの中に年収数千万の人から数百万の人までいる状態で、旦那の仕事内容から駐在妻たちもその格差は分かっています。この格差を露骨に出してしまう人は、嫌われる傾向があります。
「ヒエラルキー」という言葉がありますが、オンラインコミュニティであっても格差社会が生まれます。駐在員の夫の収入や役職、会社の名前がヒエラルキーを作り出しますのでオンラインであっても意識することが大切です。
そこで学校のイベントや地域の行事で日本人が多く集まるときにも、激しい格差社会の中にいるという自覚を持つことが大切です。ちょっとでも格差を示すような言動をしてしまうとコミュニティの中で孤立することになります。
まとめ
今回は、駐在妻が知っておくべきコミュニティについて紹介しました。
現地での人付き合いはストレスを感じることもありますが、自分たちを大いに助けてくれるものであることを理解しましょう。
また、近年ではオンラインコミュニティも人気になっています。オンラインコミュニティでは、それぞれのサイトで独自性を打ち出しており、自分のニーズに合ったものを選択することが大切です。
対面であってもオンラインであっても、上手に利用すると赴任する前、赴任中の不安を解消することができる情報を手に入れることができます。