駐在妻を苦しめるヒエラルキー どうして生まれる?対処方法はある?

駐在妻を苦しめるヒエラルキー どうして生まれる?対処方法はある?

ヒエラルキーという言葉は元々「階層」「階級組織」という意味があり、ピラミッド型の構造をしています。

日本では「マウンティング」という言葉が人間関係の上下関係で使われることがありますが、ヒエラルキーも同じような意味であると思えばよいです。

悲しいことに海外生活においても「ヒエラルキー」は存在し、これが駐在している奥さんの心を苦しめることもあります。

駐在妻を苦しめることもあるヒエラルキー

駐在妻を苦しめることもあるヒエラルキー

実は奥さんが潰れて帰国する駐在さんも多い

海外で生活をしていると奥さんが生活になじめず帰国してしまうという話はよく聞きます。

海外生活は、日本での生活とは大きく異なり、様々なところでストレスを感じ、上手く解決することができず奥さんの心が潰れてしまうことがあります。

ストレスの原因になるのは「生活の変化に対応できない」「言葉が通じない」などありますが、意外と多いのは「人間関係」です。

しかも、住んでいる国の人とトラブルになるのではなく同じ日本人同士の間で人間関係をうまく構築することができず精神的に追い詰められてしまうケースがあります。

なぜこのようなことになってしまうのでしょうか。

そこには駐在だからこそ起こりうる「ヒエラルキーの社会」の問題があります。

狭い日本人社会に入り込む

まず、はじめに駐在をしている人たちの社会は日本の社会とはどう違うのでしょうか。

一番の大きな違いは「狭い社会」であるという点です。どこの国に赴任したとしてもある程度共通している社会の特徴として次のことがあります。

  • 日本人同士の間でコミュニティができている(日本人会など)
  • 日本人の住んでいるエリアが限定されている
  • 買い物に行く場所がほぼ同じになる(日本食材店など)

特に古くから日本人が住んでいるエリアでは強固な日本人コミュニティがあり、赴任した人はその中に入っていくことになります。

強固なコミュニティほど、困ったときに助けになる一方で、コミュニティ内の縛りやルールも厳しいという点を覚悟しておきましょう。

コミュニティの特徴は国というよりも、その都市の日本人社会のでき方に関係しています。

例えば、メキシコで言えば、首都のメキシコシティは、昭和の初めの開拓団の頃からの歴史があり、日系メキシコ人の数も多く強固なコミュニティが形成されています。

一方で、中部のグアナファトやアグアスカリエンティスは、日本の自動車会社が進出したことによって出来上がった工業として、日本人社会ができたのも比較的新しく、駐在の人が中心となって日本人社会ができているため、コミュニティはあるものの駐在の人が入りやすい風潮があります。

狭い日本人社会だからこそ起こる人間関係

では、狭い日本人社会ではどんな弊害があるのでしょうか。

1つ目は、狭いがゆえに「様々な立場の人が一堂に集まりやすい」点です。

例えば、日本で生活をしていて1つの企業の社長の奥さんと平社員の奥さんが一緒に何かをするというのはそんなに多くないと思います。

しかし、駐在の場合には、こうした会が頻繁にあります。

同じ学校に子どもが通っていれば、それだけでも顔を合わせることになりますし、コミュニティの集まりがあることも多いです。

つまり会社の上下関係が奥さんの人間関係に影響しやすい特徴があります。

2つ目に、似通った行動範囲になるという点です。

駐在をしていると日本食材を販売しているお店というのは限られます。

すると、買い物に行くと同じお店で顔を合わせるということが頻繁に起こります。

買い物だけでなく、日本料理店や美容室、歯医者といった日常生活をする際によく利用する場所でも、他の人と顔を合わせることになります。

これがストレスと感じる人も多く、できるだけ他の人と合わないように遠くまで行く人もいるぐらいです。

このように狭いが故に常にほかの人の目線を気にしながら生活をしなければいけないというのが、駐在の家族に課される使命とも言えます。

行動は筒抜けと考えておくこと

狭い日本社会が故に行動にも注意が必要です。

基本的な考え方としては「自分の行動は周囲に筒抜けである」ということを常に意識しておくとよいです。

駐在をしていると他の場所に旅行に行ったり、日本に一時帰国したりと余暇を楽しむこともあります。

もちろん、休暇を利用して過ごしているので何ら問題はないのですが、これらの行動はほかの人にも知られているということが多いことは常に意識しておきましょう。

特に最近はSNSが普及し、情報が即座に拡散されやすい状況となっています。

「どこかの高級ホテルに宿泊した」「ちょっと日本旅行を楽しんできた」というような話が広がるとそれが原因となり、のちの説明するヒエラルキーができてしまう可能性があります。

狭い社会なので噂が広まる速度は速く、修正するのも時間がかかるということを念頭に置いて生活していくことが大切です。

逃げ場が少ない駐在妻の状況

ヒエラルキーに疲れてしまって、「もう関わりたくない」「逃げたい」と思ってもなかなか逃げ場所がないのが海外生活の辛いところです。

日本であれば、親族に愚痴を言ったり、友人に話をしたりしてたまったストレスを発散させることができます。

しかし、海外にいると親族は日本にいるので話がしにくいです。

友人に話をするのも要注意で、狭い日本人社会のためにちょっと話をしたことに余分な話がくっついて真意ではない形となって広まってしまうリスクもあります。

批判的に話をしたつもりがないものの相手に批判的に伝わってしまい、人間関係の修復に時間がかかるというのは海外日本人生活あるあるとも言えます。

また、悩みを抱えたときに相談をする機関やクリニックなども少ないので、上手にストレスの発散をしていかないと、ヒエラルキーの社会生活に疲れてしまうことになります。

会社の上下関係・給与差がそのままヒエラルキーに

会社の上下関係・給与差がそのままヒエラルキーに

ここまで紹介した社会構造から、なぜヒエラルキーが生まれてしまうのでしょうか。

次に駐在妻を苦しめることになるかもしれないヒエラルキーのできる要因を解説します。

会社の上下関係が日常生活まで及びやすい

駐在している人の間でできてしまうヒエラルキーの多くが帯同している奥さんや家族によるものではなく、旦那さんの仕事に起因することが多いです。

特に前述したように仕事上の上下関係に伴うヒエラルキーはどうしてもできます。

上司と部下という関係で階層ができる場合もあれば、その国に来て何年経過したかという駐在の経歴で階層ができるケースもあります。

また、親会社とサプライヤーというように会社そのものの上下関係で階層ができることもあります。

旦那さんの仕事で生まれた階層がそのまま奥さんのヒエラルキーにつながりやすいのが海外の特徴です。

したがって、駐在する奥さんも旦那さんの仕事を他人事と思わないことが大切になります。

自分の旦那の立場がどんな立場で、会社全体のどの位置にいるのか、旦那の会社は他の会社と比べてどんな位置にいるのかを理解しておきましょう。

上役の奥さんも駐在をしていると、配偶者の中でそれなりの立場を与えられることになります。(配偶者会がある場合)会のとりまとめやパーティの主催などどうしても階層の上の立場で仕事をしなければいけないケースがあることを知っておきましょう。

給与の差がそのままヒエラルキーに直結

2つ目のヒエラルキーを生み出す要因が給与差です。

海外で働いている日本人の場合、雇用が2つに分かれていることが多いです。

1つは、日本で会社に就職し海外赴任という形で会社から派遣されているケースです。

もう1つが、現地で日本企業に採用され働いているケースです。

どちらも海外の日本企業で働いているという点は同じですが、給与水準が大きく異なります。

日本の価値ベースで算出される日本から派遣されている職員のほうが現地採用の職員に比べると物価が安い地域では給与が圧倒的に高く、福利厚生も充実しています。

また、会社の規模によって同じ役職であったとしても給与水準が変わってきます。

この給与の差がそのままヒエラルキーに直結してきます。

全国的に名前が通っており、資本力のある企業の駐在妻のほうがそれ以外の企業の人を見下してしまうことはよくある話です。

中国や東南アジアといった日本人が多く勤務する企業では、現地採用の人も多く、同じ駐在妻でも給与の差によって生活水準が変わってきます。

駐在する妻の中でヒエラルキーが生まれる要因には、経済格差という大きな問題が潜んでいます。

学校での子どもの生活にも影響を与えることも

ヒエラルキーの形成は、駐在妻に影響を及ぼすだけのものではありません。

お子さんがいれば、子どもの生活にも大きな影響を与えることもあります。

その1つが進学です。中学校入試や高校入試などの受験を控えている子どもがいると、どうしても保護者の間で情報交換が行われます。

私が経験したケースだと、進学先として、公立を選んでいる人、私立を選んでいる人、名門私立を選んでいる人など選ぶ学校によって受験生の親がグループに分かれました。

そして、その中でグループが出来上がっているのですが、やはり名門私立を選んだメンバーが少しその他の人を見下したような発言をしたという話を聞いたこともあります。

どんな学校を選択するのかは個人の自由ですが、その選択によってヒエラルキーが生まれてしまうのも現実です。

学校で言えば、旦那や駐在妻の出身校によってもヒエラルキーが生まれることがあります。

「大学を卒業している」「名門大学を卒業している」「関東の大学を卒業している」そんな話をしながら自然とヒエラルキーが形成されていくこともあります。

ヒエラルキーが起こりやすいケース

ヒエラルキーやマウンティングはどんな場所で起こりやすいのでしょうか。

私がこれまで経験したり、話を聞いてきたりしたところからまとめると「大きな都市」「日本人が多い」「古くから日本人がいる」この3つがポイントになります。

例えば、中国の上海、タイのバンコク、ヨーロッパであればロンドンなど、主要都市で日本人が多く、しかも大企業の支店が集まっています。

これらの都市、または先ほど述べた3つの条件に当てはまる都市へ赴任する予定がある場合には、少し注意をしておくとよいです。

できれば、実際にその年に生活していた人に話を聞いて、配偶者同士の人間関係について事前に情報を仕入れておくと安心できます。

どうやって対処をしていくか

どうやって対処をしていくか

では、実際に海外で生活をしていくにあたってヒエラルキーに対処する方法はあるのでしょうか。

また、実際に自分がマウンティングの対象になってしまった場合にはどうすればよいのか紹介します。

ヒエラルキーはあるものと思って生活する

まず、一番大切なことは「ヒエラルキーはあるもの」だと思って生活をすることです。

この文をここまで読んでいただいた方には海外で生活する駐在妻がヒエラルキーで悩みやすい状況にあるということを理解していただけたと思います。

そこで赴任する前の段階から「ヒエラルキーはある」と覚悟を決めて赴任しましょう。

中には赴任早々、強烈なマウンティングをしてくる赴任妻もいます。

そうした人を見かけたときに「やっぱり」と思える心の余裕を持っておくことが大切です。

しかし、安心してほしいのはヒエラルキーを振りかざしてくる人は、ほんの一部ということです。

多くの駐在妻は、慣れない土地に赴任になり、知らない文化、言葉の中で不安な生活をしてきた人ばかりです。

そんな人は、赴任するこちらの状況を理解してくれ、サポートをしてくれます

駐在する側も考え方の変化が必要で、相手から何かを言われたらすぐに「ヒエラルキーな感じがする」「マウンティングだ」と思ってしまう人がいますが、そこまで敏感に反応する必要はありません。

相手の給与や企業名などが背景に見えることもありますが、気にしないことが大切です。

本当にヒエラルキーを振りかざしてくる人であれば、他の人に分かるように露骨にやってきます。

無理な背伸びをした生活はしない背伸びするだけ疲れる

2つ目のポイントが「ヒエラルキー」を感じた時に背伸びをした生活をしないということです。

前述したように海外で生活をしている人の給与差は大きく、すぐ近くにいると生活水準の差を感じることになります。

相手よりも劣っている感じがするので、無理やり高いレベルに合わせようとすると経済的な負担や自分の心への負担が大きくなり生活が立ち行かなくなる恐れもあります。

背伸びをする分だけ疲れるという状況になってしまうのです。

そこで重要なのは背伸びをするような生活はしないことです。

ヒエラルキーが起きてしまう要因を理解し、自分がどの立ち位置にいるのかを理解して生活しましょう。

そして、できるだけ普段お付き合いをする人も、自分と同じような生活水準の人を見つけて一緒に過ごしていくのがよいです。

上の人ばかりと付き合っていると、それについていくことでいっぱいになり負担感が増します。

入れ替わりの激しい社会・無難な付き合い方を覚える

3つ目のポイントは「入れ替わりの激しい社会」であるということです。

海外赴任している人は、日本よりも頻繁に異動があります。

ご近所で3年間も一緒に過ごすことができるのは比較的まれなケースで、1年も経つと周りの人が変わっているということもよくあることです。

ヒエラルキーで苦しんでいたとしてもそれがずっと続くわけではなく、赴任・帰任の入れ替わりの中で環境が目まぐるしく変わっていきますので、一時の我慢と辛抱するのも1つの考え方です。

また、人間関係の付き合い方も日本とは変わってきます。

特に持ち家で、長く地元に住んできたような人からすると深い付き合いをしたほうがよいのではないかと考えがちですが、海外は人の出入りが激しいので、親密に付き合っていてもすぐに離れなければいけない状況が生まれやすいです。

無難な付き合い方というと難しいかもしれませんが、人間関係の距離感を上手にとって生活をしていくことも大切です。

最初のうちは、日本とは異なる距離感の取り方に戸惑うことが多いですが、駐在妻として生活をしていくのであれば身につけたい能力です。

まとめ

ここまで駐在する人に大きな負担感を与えるヒエラルキーについて紹介しました。

大切なことは「駐在妻の中には、ヒエラルキーは存在しうる」という覚悟です。

なぜなら、日本よりも狭い社会で上下関係のある人、給与水準の差のある人がひしめき合うように生活をしているためです。

そこで、人間関係作りをしていくときには心に余裕をもって接することが大切になります。

また、自分たちは自分たちの生活をするという、ぶれない心をもって家族と生活をしていくことが大切になります。

  • この記事を書いた人

emikyon

ドバイ、アメリカ、メキシコでの駐在妻を経験。大好きな海外旅行の際に、飛行機のマイルを貯めることもライフワークの一部。元小学校教諭。英検準1級。

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