駐在妻の生活というと華やかなものを想像している人も多いのではないでしょうか。
実は、赴任先によって生活の雰囲気は違います。
ニューヨークのような大都市、その国の首都に赴任となれば、日本人も多く、すぐに知り合いを作りやすい場所がある一方で、地方都市や日系企業の少ない地方都市や未開発のエリアだと気軽に話すことができる日本人もおらず孤独感を感じる場合もあります。
筆者も両タイプの街での生活を経験しました。
そこで、今回は駐在妻生活で孤独を感じるのはどんなときか、どう克服をしていくか、これから赴任予定の奥様が不安にならないような情報を提供していきます。
もくじ
駐在妻が孤独と感じてしまう背景
なぜ駐在妻は「孤独」を感じてしまうのでしょうか。それには様々な背景があります。
これから赴任になる人は「友達がいない」「言葉が通じるかどうか不安」などいろいろな感情が生まれていると思います。そんな感情も孤独を感じる要因です。
まずは、駐在妻が孤独を感じてしまうのはどんな背景があるからなのかを理解しておきましょう。こんな風になるんだと知っておくだけでも気持ちはかなり楽になるはずです。
心許せる親族がいない
はじめに、筆者の経験談から、孤独を感じた一番の要因は「親族がいない」ということです。
結婚して実家は離れたものの、比較的近くに自分の親が住んでいましたので、困ったときにはすぐに相談に乗ってもらうことができました。義父母もほぼ同居のような感じでしたが、子育てに困ったときや自分の仕事が忙しいときにはすぐにサポートしてくれ、頼りになる存在でした。
やっぱり親族の存在は大きく、すぐに相談ができるという距離感は安心感につながりました。
しかし、海外赴任になるとそうはいきません。自分が困ったときに心許せる親族が近くにいないのは、筆者が海外赴任をして初めに孤独を感じた出来事でした。
気兼ねなく日本語で話すことができない
次に孤独を感じたのは、気軽に日本語で話をすることができない点です。
先ほどの親族がいない部分とも共通するところもありますが、近所の人とちょっとお話をしようと思ってもその国の言葉で話をしなければ通じません。
コミュニケーションをとることができるのですが、わざわざ言葉を直す必要があり、聞き取るときには翻訳をしなければいけません。それだけでも結構なストレスになります。
日本人の友達と話していると感じるのですが、外国語を話す、聞くというのは労力を使います。気兼ねなく日本語で話すことができるというのは安心感があり、話すことができないというのは孤独のような疎外感を感じることになります。
日本語が聞こえてこない
海外の街中で過ごしていると感じるのが「日本語が聞こえてこない疎外感」です。
海外に行くとわくわくするのが旅行ですが、生活となるとそこまでわくわくはしません。特に生活が始まったばかりの頃は、ちょっとした買い物も冒険のような感じで、帰ってくるとぐったりしたのを覚えています。
スポーツで「ホーム」や「アウェイ」という言葉がありますが、海外生活というのは、まさに「アウェイ」の状態。周りを見ても現地語の看板や違う言葉が飛び交っているので自分一人だけ置いていかれる感じがします。
さらに日本人よりも中国人が多いようなエリアでは「China?」と声をかけられたり、アジア人が少ないエリアでは「外国人」という視線を向けられたりすることもあります。
日本語が聞こえてこないだけですごく「アウェイ」を感じますし、周りの目線も気になるため、孤独を感じることになります。
日本の良かった部分がフラッシュバック
駐在妻生活をしていて孤独を感じるようになると、次に出てくるが「日本は良かった」という気持ちからくる孤独感です。
筆者がこの感覚に襲われたのは赴任してから1か月程度が過ぎたときでした。駐在してすぐのころは目新しいものも多く、新しい生活に戸惑いながらも順応していこうとします。1か月程度経ってくると少し余裕ができ、周りが見えるようになると気が付くのが日本での生活の便利さ、日本との違いです。
特に物事の準備に関しては、日本は綿密であり、利用する人が使いやすいように用意されています。
しかし、海外では「基本的に自己責任(特にアメリカなど)」の考え方なので、必要最低限までしかサポートしてくれません。筆者はこの辺りの考え方をはじめ理解することができず、ストレスがたまることもありました。
そして、ストレスが溜まってくると考えてしまうのが「日本の生活の方がよかった」という後悔に近い感情です。後悔をしているときには、本当に孤独を感じることになりました。
何事もワンオペになることが多い
孤独を感じるときは、1つの要因だけでなく、複数の要因が重なります。
しかも、その要因の大半は精神的にダメージを与えるものであることが多いです。複数の要因を生み出しやすい一つの例が「ワンオペの育児」です。
海外で育児をするのは、日本に比べるとはじめ負担が大きく、精神的なダメージを与えます。
前述したように親族が近くにいないこともあり、どうしても育児に関してはワンオペになりやすくなります。さらに、ちょっと公園に行こうとしても治安面を気にしなければいけなかったり、幼稚園や学校も送り迎えが必要であったりと全てを一人でこなしていかなければいけないことが多いです。
この負担感がどんどん精神的にダメージを与えてきます。ダメージが溜まってくると外に出るのも億劫になり、やがて孤独感が生まれるようになります。
孤独から脱却するために
では、これから海外赴任を控えている奥さんは、孤独を感じないようにするためにはどうすればよいのでしょうか。
事前に孤独を感じやすくなる状況を知っておくことも大切ですが、もう1つ「対策ができるものは準備しておく」ことも大切になります。
先輩駐在妻として、これから赴任する人に向け、アドバイスを3つ示します。キーワードは「人間関係作り」です。
まずは頼りになる人を作る
孤独感を感じないように駐在生活を始めるにはどうずればよいのか、赴任後すぐにでもやり始めたいのが「人間関係作り」です。
赴任後の駐在妻が最初に関係をもつ可能性があるのは
- 同期で派遣になった駐在妻
- 旦那と同じ会社に勤めている人の奥さん
- 家の近くに住んでいるご近所さん
おおよそ上記のメンバーが赴任後最初に関係をもつ人々になります。
この人たちと関係をもつことのメリットは「日本語で気軽には話すことができる」点です。いくら言語が堪能で赴任したとしても、やっぱり日本語で話すことができる仲間がいるというのは安心感が違います。何でも聞いていると相手から印象が悪くなりますので、自分でできるところまではやってみて、そこから先の分からない部分は頼るというスタンスをもっていると相手にもよい印象を与えることができます。
先輩駐在妻は頼りになる存在
「人間関係作り」をしていく中で、頼りになる存在が現地に住んでいる「先輩駐在妻」です。
現地での生活経験をもっているだけでなく、言語面が不安な人にとっても困ったときに助けてくれる存在です。既に日本人が多く住んでいる都市では、駐在妻のネットワークがあり、そこに加入するだけで先輩駐在妻と知り合うことができます。ネットワークがないところでは、旦那の会社の同僚奥さんが頼りになる存在です。
先輩駐在妻と関係性を作っていくときには、恩義の関係を大切にしましょう。先輩駐在妻と言ってもかつては新米駐在妻であり、そのときには先輩にお世話になってきました。今回自分たちがお世話になったということは、いずれ還元する機会を設ける気持ちでいるとよいですね。
次に赴任してくる人のサポートなどを先輩駐在妻から依頼されることがあるかもしれませんが、その際には、恩義と思って快く引き受けるぐらいの姿勢をもちましょう。
現地のありのままを受け入れる
3つ目の対策が、現地のありのままを受け入れる気持ちを用意しておくことです。
海外赴任が決まった奥さんは、本やインターネットなどを利用して現地の様々な情報を調べると思います。調べれば調べるほど「不安感」が高まってくるのではないでしょうか。筆者は、初めて赴任する都市に行くとき、いろいろ調べれば調べるほど不安になりました。
しかし、実際に赴任をしてみると事前の情報とは全く違うことも多いです。あまり情報を仕入れて武装して現地に行くよりも、現地に着いて向こうのありのままを受け入れて生活を始めたほうが気は楽です。治安に関しても不安を煽るような情報はたくさんあります。
しかし、実際に現地に行って情報を調べてみると「当たり前のルールを守っていれば大丈夫」ということも多いです。情報化社会のため、いろいろな情報が飛び交いますが、現地の情報が一番正しいと思って最新情報を手に入れるようにしましょう。
恩返しをすることでさらに楽しく
海外赴任の孤独感が分かる人は、海外赴任を経験したことある人にしか分かりません。そこでその経験を還元することで、駐在生活を楽しいものにすることができます。
新しい人間関係を作ることもできますし、周りから信頼される「恩返し」を先輩駐在妻になったらしてください。
赴任した直後の不安な状態が分かるのは先輩だけ
筆者も赴任前から赴任した直後の不安感は経験をしたからこそ分かるものがほとんどです。
だからこそ、新しい駐在妻が赴任してきたときには「不安感」や「孤独感」をいかに取り除くことができるかを意識して声掛けしていました。
声掛けをするときに意識したのは、お節介にならないように、でも必要な時に声をかけてもらえる信頼感を作ることです。お節介になってしまうと、相手は逆に話しかけにくくなってしまうので気を付けています。
そして、赴任したばかりの駐在妻が困りそうなポイントを先に助言してあげるようにします。不安から孤独が生まれてくると思っているので、先輩駐在妻になったときには「不安にさせないこと」を意識しましょう。
自分が受けた恩は次の代に引き継ぐ
日本人が多く住んでいるエリアでは、新しい駐在妻のサポートがしっかりと出来上がっています。サポートをしてくれるのは、旦那の会社の婦人会のような組織のこともあれば、日系企業が作っている団体の奥様会のようなものの場合もあります。
どちらにも共通しているのは「恩を引き継ぐ」という考え方です。
同じ駐在妻同士でサポートしていく組織になっているので、自分がその担当にあたったときには、ぜひ積極的に参加して恩返しをしてください。
自分が夢中になれるものを見つけたら克服
最後に、駐在生活中に不安感を感じないようにするために心がけておいてほしいことを紹介します。それが「夢中になるものを見つける」ということです。駐在妻生活であってもいろいろな趣味はできます。
例えば、現地ですぐに使って自分の生活にも役立つ語学学習、語学に関する学習であればオンラインや現地で家庭教室を付けて勉強することができます。
他にも現地の文化を知る習い事をしてみる、日本で積み上げてきたスキルやキャリアアップを目指して勉強するなどです。夢中になるものを見つけることができれば、自然と外部の人(現地の人や同じ趣味の仲間など)と接する機会が増えます。多くの人と接するというのは「孤独」を感じにくくなるので、孤独を克服することができます。