旦那へ会社から海外赴任の辞令、日本で生活をするのも大変なのに、これが海外生活となると奥さんは一気に不安な気持ちになるのではないでしょうか。
特に、お子さんがいる家庭では、自分たちの準備だけでなく、子どもたちの準備もしなければいけなくなるので、不安感が増している人も多いと思います。
ここでは、駐在妻がどのように子育てをしていけばよいのか、準備から現地での対応まで苦労すると思われること、知っておくべきことを紹介します。
もくじ
海外子育てで知っておくべきこと
はじめに、海外で子育てと言っても日本で行う子育てと基本的には同じです。しかし、「日本では当たり前のことができない」「支援が少ない」など海外独特の悩みもあります。そこで、まずは連れていく子どもに合わせてポイントがあるので3つ紹介します。
どの年齢で行くのか
海外への赴任になったときにまず確認しなければいけないのが、子どもがどの年齢になるのかです。赴任期間が決まっているのであれば、海外で過ごす子どもの年齢が分かります。そこで年齢に合わせた準備が必要になります。
①乳児での赴任
子どもが乳児期の赴任であれば、学業に関する心配をする必要はありません。では、何を心配しなければいけないかというと「医療」です。
乳児期の子どもは、ちょっとしたことで発熱したり、怪我をしたりします。日本であれば、すぐに小児科にかかればよいのですが、海外での場合、日本ほど簡単ではありません。
そこで、現地で小児科治療をしてもらうことができる病院を調べておくことと、日本で使っていた母子手帳を持参しましょう。
英語版の母子手帳は、居住している自治体で発行してもらうことができる他、すでに海外に渡航している場合は、厚生労働省のウェブサイトからダウンロード(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/kenkou-04.html)して手に入れることができます。少し大変ですが、日本で保有している母子手帳の内容で「予防接種」や「アレルギー」などの項目を英訳して持参すると現地に行ってから役立ちます。
また、乳児を連れての赴任となるとおむつやミルクといった日用品を心配する奥様も多いのではないでしょうか。結論から言えば、おむつやミルクはほとんどの場所で手に入ります。ただ、日本と比べると以下の点で劣るものが多いです。
- おむつに香料が使われており、匂いが強い。
- おむつの吸収性能が日本製より弱い。
- 価格が高い。
私が気になったのは上の3点です。
やはり日本製は性能が良いのですが、全てを持参することは不可能なので、現地で子どもに合ったものを探すのが現実的です。日本でもよく知られた海外メーカーのものもあり、現地生産に比べれば割高ですが安心して使えます。
②幼児での赴任
幼稚園に通う時期の子どもを連れて赴任する場合には、現地の幼稚園への入園を考えることになります。
日本人が多くいる都市であれば日本人向けの幼稚園がありますが、日本人向けの幼稚園がないところのほうが多いです。そこで通うとすれば現地の幼稚園またはインターナショナルスクールの幼稚園になります。
海外の幼稚園は「私立」が多く、通いやすさを重視して決定することになります。送迎バスはなく保護者による送迎が基本です。幼稚園ごとに特色があり選ぶのに困るかもしれませんが、すでに現地に住んでいる日本人が通っているところもあり、到着してから情報を収集し、入園しても遅くありません。
一般的な傾向として現地校は授業料が安く、インターナショナルスクールのほうが高い傾向がありますが、インターナショナルスクールの場合、小学校への進学面で優遇されるところもあります。
③学齢期(小中学校)での赴任
一番、学校の選択肢が難しいのが学齢期での赴任のケースです。子どもがこの年齢になると、将来的な子育てのビジョンも踏まえて学校を考えることがポイントになります。
選択肢としては「日本人学校」「現地校」「インターナショナルスクール」の3つが基本です。それぞれのメリットを挙げると以下のようになります。
・日本人学校
日本の教育カリキュラムに従い、授業を実施。教師も日本から派遣された先生で、日本の教科書を使って授業を行う。4月はじまりの3月終わり。帰国後、日本の学校へ入学するのであれば子どもが一番楽。日本の入試にも対応してくれる。
・現地校
赴任地の教育カリキュラムに従い教育が行われるため、言葉は基本的に現地の言葉で行われる。帰国後日本の学校へ入学することもできるが、日本語に関する知識や技能は、家庭学習や近隣にある日本人学校の補習校で学ぶ必要がある。
・インターナショナルスクール
学校独自のカリキュラムで教育が実施され、英語での学習が基本。
英語力は大きく伸び、日本人の子どもが通っていることも多い。日本の入試も対応できるところが多く、特別推薦枠で、日本の高校に入ることができるところもある。学費が高いのが難点。
学齢期の子どもを連れて赴任する駐在妻が考えなければいけないポイントは赴任後のことです。海外赴任後、日本へ戻るのであれば、日本人学校を選択するとスムーズに転校できます。
一方、海外からさらに次の海外都市へ移動することが考えられる、または現地で長期にわたり過ごすことが考えられる場合には、現地校やインターナショナルスクールのほうがメリットは大きくなります。
途中で、学校を変更することも視野に入れつつ、将来的な生活ビジョンを考えながら学校選択をすることがポイントになります。
④高校生以上での赴任
高校生以上の子どもがいる状態で海外赴任となると赴任前の段階で選択肢が生まれます。
日本には全寮制の高校があり、海外赴任をしている子女を専門に教育する高校があります。子どもを連れていかないという選択肢があることを知っておきましょう。
高校生以上を子育てする場合、海外ではほぼ大人と同等の扱いになります。運転免許を取得することが出来たり、飲酒することが出来たりする国もあるので、国ごとのルールをしっかりと理解させて、責任をもって行動するように育てることが大切です。
教育に関しては現地の高校やインターナショナルスクールが進学先となります。
日本人学校で高等部があるのは中国にしかありません。(認定した在外教育施設の一覧:文部科学省 )高校のインターナショナルスクールは、学校によって入学基準が異なり、条件を満たしていれば入学することができます。
しかし、条件が「英検2級以上保有」など厳しいので、希望する学校に入学するための難易度は高いです。小中学校以上に高校への進学を考えている人は、現地の情報を入念に調べておく必要があります。
一番に考えることは安全
海外で子育てをするときに一番意識しなければいけないのが「安全」です。例えば、公園に遊びに行くとしても子どもたちだけで遊ばせるのは危険です。ショッピングモールでさえも、親子が離れて行動することはできません。
小さい子であれば親から離れないように手をつないで移動する、一人で移動しないなど教育をする必要があります。また、保護者も高価なものを身に付けたり、むやみにスマートフォンを取り出して利用したりしないなど周囲の目に配慮する必要があります。
「安全は金で買う」というのは駐在している人の間でもよく言われる言葉です。子育てをしていると一人の時以上に周りが見えなくなってしまいます。移動するときにお金がかかってもタクシーを利用したほうが公共交通機関を利用するよりも安全ですし、自家用車が利用できるのであればもっと安全です。居住地においても、会社への通勤や家賃などいろいろな条件がある中で、「子育てをしやすいエリア」を選択しましょう。
買い物に簡単にいくことができる、遊ぶことができる公園がある、バリアフリーが徹底されておりベビーカーであっても通りやすいといった子育て視点で居住地を見つけて、見学し決定することが大切です。
進路・進学相談は早めに行う
3つ目に学齢期の子育てをする妻が知っておくべきポイントが「早めの進路・進学相談」です。子どもの進路に関わる情報については早めに手に入れて、学校にも相談をしておくことが大切です。
例えば、高校進学を考える場合、日本に住んでいれば中学3年生になってから準備を始める人が多いですが、海外の場合、それでは遅いです。理由として現地校またはインターナショナルスクールへの進学をする場合、入学予定校の「学校基準」を満たさないと入試を受けることさえできないケースがあるからです。
例えば、アメリカのある学校では、現地校への進学条件としてTOEICやケンブリッジ英検の一定点数以上が必要という条件があります。現地校やインターナショナルスクールでは、日本の学校の評価基準を使わず独自の試験をすることが多く、中学校での評価ではなく第三者の評価を尊重することが多いです。
日本の高校でも、海外子女枠を使った推薦入試をする場合に英検や現地語検定の成績を加味するところがほとんどです。このような検定は3年生になってから受けていては、推薦条件を満たすことができなくなってしまうので、遅くても中学2年生ぐらいから対策を始める必要があります。
北米大陸にあるメキシコでは、現地学校に入学する際、SEPと呼ばれる資格を取る必要があり、この資格は1年間学習をして得ることができます。このように進学を考える場合には、日本以上に早めに情報を集め、進路決定をしていくのもポイントになります。
一例として、中学生で高校は日本への進学を希望している子は、中学1年生または2年生の段階で日本へ一時帰国する際に高校見学を実施し、志望校を決め、中学3年生の冬休みまでは海外の日本人学校で勉強し、冬休みに帰国。その後、日本の公立中学校に通いながら公立高校または私立高校を受験するというのが基本パターンになっています。
現地の文化を尊重する
海外で子育てをするには、海外の文化を尊重することも大切です。日本も子どもに関する多くのイベントがありますが、海外でも同じです。
現地ルールに従う子育て
海外で子育てをするためには現地ルールに従う必要があります。ルールに従わないと外国人であっても罰則があります。
例えば、私が住んでいるアメリカでは「ティーンエイジャー」と呼ばれる13歳になると初めて自分の行動に責任を持つことができるようになります。13歳未満の子どもを「一人で留守番させる」「街中を歩かせる」などをさせると保護され、親には罰則が科されます。
これはショッピングモールや遊園地にある遊び場も同様です。場合によっては、児童虐待と判断されることもあり、こうなると警察や弁護士が入り非常に面倒なことになります。子どもを大声で叱る、たたくなどの行為も日本以上にシビアで、即虐待として通報されるケースもありました。
子どもを大切にするのは各国で共通をしていますが、子どもを守るためのシステムは海外のほうが日本よりも進んでいます。日本人が多く住んでいる国では、子育て世帯への支援もしっかりとしており、日本の保健所で行われているような育児相談や3歳児検診も受けることができます。
これらの支援は、各国にある大使館または領事館が主体となって行われているので、居住している国の大使館や領事館のホームページを時々チェックすると子育てを支援する情報がみつかるときもあります。
イベントも現地の人に合わせて
海外での子育てで「楽しい」と感じる瞬間が様々なイベントです。日本でも子どものためのイベントは数多くありますが、海外も多いです。そもそも子どもにかける教育費の割合は、日本よりも外国のほうが多い傾向があり、誕生日やクリスマスのイベントも大々的に行われます。こうしたイベントは、日本人からすると驚くことが多いですが、「招待をされた以上は招待をする」という原則があることも覚えておきましょう。
気を付けておきたいのが日本で当たり前のイベントでも海外では、しきたりが違うケースがあるという点です。例としてクリスマスを紹介しますが、日本だとクリスマスイブの夜にサンタさんがやってきてプレゼントを置いていくというのが定番です。しかし、海外ではキリスト教の宗派によって対応が異なり、クリスマスにもらえるケース、年が明けてから三賢者と呼ばれる人がプレゼントを持ってくるケースもあります。親も現地の文化やしきたりを勉強してイベントに参加すると新しい見識が生まれます。
アメリカにおける子育て
私自身、アメリカで駐在妻となり2人の子どもを育てています。最初は慣れないことばかりで、私が驚くことも多かったのですが、子育てにおいて一番違ったのが「子どもに養わせる価値観」でした。
日本の子育てでは周りと協力していく「協調性」を育むことが多く、幼稚園や学校の教育カリキュラムも従っている部分があります。アメリカの子育ては「自主自立」を重んじており、「生きる力」を付けることを前面に押し出した教育になっています。
そのため、小さいころから親とは別の寝室で寝る、シャワーは一人で浴びる(父と娘で入ると虐待の疑いを持たれる)といったことが現地の子育ての「当たり前」でした。したがって、駐在をして子育てをするということは、日本の文化や風習よりも現地に合わせて育てていくことがとても重要であると感じています。
また、もう1つ苦労をした点が教育費です。アメリカには日本人学校が3か所しかなく、私が住んでいる地域には日本人学校がありません。日本人学校は基本的に大きな街、首都やそれに類するような大規模経済都市に多く、地方都市に少ないのがどの国にも共通しています。日本人学校も私立の学校のため日本の公立学校に比べると学費が高いのですが、日本人学校がない場合、現地校またはインターナショナルスクールしか選択肢がなくなります。
アメリカの現地校への入学は、難しくないのですが「割り振り制度」があり近くの学校が定員の場合、遠くの学校へ回される可能性があります。そこで送迎バスのあるインターナショナルスクールへ入学をしたのですが、入学金や授業料だけで数十万円、その後も5万円以上の授業料が発生するなど、アメリカでそれなりの教育を受けさせようとすると高額なお金がかかります。
幸い、会社から補助が出ることが分かり、家計の負担は少なくなりましたが、学校選びは学力と教育費を天秤にかけなければいけない事態になることがよくわかりました。
苦労した点と事前の準備
ここまで子育てのポイントについて紹介しました。最後に私自身が幼稚園年中と小学校1年生の娘を連れて赴任した時に苦労したことを紹介します。
転校に関する手続き
私がアメリカに赴任をしたのは新型コロナウイルスの流行前であり、今とは少しシステムが変わっていますが、それでも苦労をしたのが転校に関する手続きです。
転校の手続きに苦労した理由として、現地に到着しないと様々な手続きを進めることができないということです。
まず、日本の学校から転校するのはとても簡単です。学校に転校する旨を連絡し、転校する日に日本の学校に在籍した証明を受け取り、あとは市役所に行って海外転居の手続きをすれば完了になります。日本の学校に在籍をしていた証明は、現地の学校に進学をするときには必要ありませんが、現地の学校に行きつつ、日本人学校の補習校に入学する場合には必要になるので必ず持参して渡航します。
問題は、現地の学校への入学手続きです。現地の学校への入学手続きはすぐに行うことができる国は少なく、まずは、居住する住居を決め、さらに滞在を証明するビザを取得します。これらの書類を持って、入学する予定の学校に行き手続きをします。この手続きの段階になって初めて必要な書類が分かることが多いです。
基本的には、親と子どもの身分証明書、入学願書があればよいのですが、私が入学しようとした学校では、幼稚園の卒業証明が必要であることが後になって発覚しました。小学校1年生から編入しようとしたため、その前の学年を終えている証明が必要ということで、あわてて日本の幼稚園に連絡し、親族に取りに行ってもらい、メールで送ってもらいました。
このように入学段階になってから必要な書類が生まれることは多くあり、日本とやり取りをして書類を送ってもらうというのはよくある話なので注意が必要です。
ワンオペになる育児
2つ目に苦労をしたのがワンオペになってしまう育児です。育児は夫婦で協力をして行うのが基本ですが、実際に子育てをしていると夫だけでなく、祖父母であったり、周囲の人に助けてもらったりして育児をしていることが多いです。赴任してすぐのころには、旦那も仕事が忙しい状態となり、なかなか育児まで手伝ってもらうのは気が引けます。
実際に、赴任したら育児のワンオペになってしまったストレスから奥さんが病気になってしまったり、帰国してしまったりするというのもよくある話です。
そこで、事前の準備としてできることとして予定を入れすぎないようにすることが大切です。子どもがいるとできるだけはやく入学手続きをしなければいけない、現地の人とあいさつをしなければいけないと思うかもしれませんが、予定は入れても半日分にして、残りは自分の準備時間として使うのが良いです。
また、日本を出発する前までに下調べをしておくことも大切です。居住するエリアが決まっている人は、どんなものが家の近くにあって手に入れることができるのか、何がないのかを把握しておきます。
私の場合、家のすぐそばに会員制のスーパーがありましたが、日本を出発する段階で、このスーパーの会員証をオンラインで事前に作っておき、赴任後はすぐに買い物ができるようにしておきました。これだけでも、赴任後のストレスが変わります。
日本人との付き合い方
3つ目に苦労をしたのが日本人とのつながりです。赴任をすると日本人同士のつながりが生まれ、最初のうちはとても頼もしく感じます。「日本人会」とよばれる組織が作られている国も多く、各自で役割分担をして情報収集をしたり、価値のある情報を得た時には共有しあったりしています。
一方で、日本人とのつながりが窮屈に感じるときもあります。情報の共有がとても早いので、あっという間によい話も悪い話も伝わっていくことになります。また、旦那の会社における立場も奥さんの立ち位置に関わってくることがあります。
プライベートと公的な部分の境が少なくなり、だれがどこに行っていたのかという情報がすぐにわかってしまうのも狭いコミュニティーの欠点と言えます。そのため、駐在妻としての立ち振る舞いや日ごろの言葉遣いなどにも気を付ける必要があり、気苦労をすることが多いのも駐在妻の子育てあるあるです。
まとめ
ここまで駐在妻の子育てにおいて苦労した点、知っておくべき点について紹介しました。
海外の子育てにおいて苦労することが多いのは子どもの学校のことが中心です。乳幼児のほうが心配と感じている人もいるかもしれませんが、海外の子育てグッズは日本並みに充実しており、逆に海外のもののほうが使いやすかったりすることもあります。チャイルドシートやベビーカーなども日本から持ってこなければいけないようなことはほとんどなく、現地で購入したほうが送料も含めると安くなることさえあります。
あと、頼りになるのがすでに現地に住んでいる人の情報です。さまざまなアドバイスや助言をもらうことができるので、その中から自分の子育てに合ったものを選択し、現地で作り上げていく考え方を持っていれば海外の子育ては心配なく行うことができます。