駐在妻となって海外に赴任すると、忙しくなる人もいれば比較的時間に余裕ができる人もいます。
特に日本でフルタイムとして働いていた人にとっては、海外駐在中に暇な時間を持て余しているのももったいないと感じて、仕事をしたいと思う人もいるのではないでしょうか。
筆者自身も駐在妻として赴任している間にアルバイトや内職をしていた経験があり、日本では得ることのできない経験をすることができました。
そこで駐在妻のアルバイトについてどんなことができるのか、どんな仕事があるのかを紹介していきます。
また、アルバイトをするにあたり注意することもいくつかあるので、働く前に知っておきましょう。
もくじ
駐在妻のアルバイト事情
駐在妻がアルバイトをする
はじめに駐在妻のアルバイト、またはパートタイムで働くということに関して結論から言えば就労は可能です。
実際にアルバイトをして報酬を得ている駐在妻も多くいますし、現地在住の日本人を相手にに貢献をしている人も多くいます。
しかし、だれでも簡単にやってよいわけではなく、ルールに則ってやることが問題を起こさないポイントになります。
筆者の周りにも、何気なく始めたアルバイトが大問題となってしまったケースもあり、旦那をはじめとして周囲に多大な迷惑を欠けることになりました。
このようにならないためにも正しい手順を踏んだやり方を理解しましょう。
アルバイトをする前に確認すべき2つのこと
駐在妻として海外赴任中にアルバイトをしたいと思っても日本のように簡単に求人募集に応募して働くことはできません。
海外でも日本と同じように求人募集サイトがあり、お店には求人募集の広告が掲載されているケースもありますが、簡単にはできない事情があります。
駐在妻が簡単にアルバイトのできない理由が「査証(ビザ)」の問題です。
駐在をするときにはほとんどの人が「査証(ビザ)」を取得しているはずです。
海外旅行などの短期滞在の場合は、ビザの取得が免除されている国でも駐在となると長い期間滞在をすることになるので、ビザの取得が義務付けられている国が多いです。
「査証(ビサ)」にはいくつかの種類があり、国によってルールは異なりますが、一般的に働く人(多くの場合が旦那)が取得するのが「就労ビザ」というもので、その国で働き、収入を得ることが認められているビザになります。
就労ビザは審査の基準が厳しく、日本を出発する前から事前の手続き、収入状況の報告、場合によっては領事館での面接をしないと取得することができません。
そして、「就労ビザ」を保有している人に帯同する家族もビザが発給されます。ただし、「家族のビザ」に関しては国によって制限が大きく違うのです。
例えば、アメリカで家族に発給されるビザは「L-2」というビザが発給されます。
このビザは2021年まで就労をすることが認められなかったのですが、最近ルールが改正され、配偶者は就労の許可を申請することができるようになりました。
申請には手数料が必要になりますが、EAD(就労許可書)があれば就労できます。
一方で、中国や韓国、台湾などでは「帯同ビザ(家族ビザ)」での就労が認められていません。
就労が許可されていない国ではたとえ、アルバイトであっても収入があると問題になるので注意が必要です。不法就労となると罪がかなり重く、最悪査証の取り消しにも発展してしまうことがあります。
また、確認するべき2つ目のこととして「会社として就労を認めているかどうか」もポイントになります。
会社とは旦那が務めている会社で、会社ごとの内規によって配偶者の就労を認めていないケースもあります。就労を認めていない理由はさまざまですが、「安全上の理由」であったり「扶養手当に関わる税制上の理由」であったりします。
会社として、妻が働かなくても済むように配偶者手当を支給しているところがあり、アルバイトをするには旦那の会社が配偶者の就労を認めているかどうかの確認も必要です。
上記の2点については駐在妻だけでなく家族も関係してきます。
帯同している家族に高校生や大学生がいても気軽にアルバイトをすることができるかというと、そうではないので注意しておきましょう。
納税が必要になるケースもあるので相談
上記の2つの確認事項をクリアして働くときにもう1つ違うところで確認したおかなければいけないのが税金の問題です。
日本でも居住していれば様々な税金を支払うことになりますが、これは海外でも同じです。
しかし、海外赴任をしている人の場合、その国のルール上、税制面で優遇を受けているケースがあります。(例えば、本来所得があるので所得税を支払う必要があるが、その国から社会保障を受けていないという理由で免除されている)
この税制面の優遇を受けることができているのが「就労ビザ」によるものなのか、海外赴任者であることによるものなのか確認する必要があります。
就労ビザ以外の保有者が得た報酬に対して課税される国もあるので、できれば法律の専門家、または同じ国で先に就労をしている仲間がいるのであればその人に税金の支払いについては確認しましょう。
駐在妻のアルバイト内容
では、実際に全ての問題をクリアすることができたとしてどのようなアルバイトをしているのでしょうか。
具体的な実例を紹介していきます。
日本人を相手にした会社でアルバイト
一番関わっている人が多いアルバイトが「日本人を相手にしたアルバイト」です。
海外であっても場所によっては日本人が多く居住しています。
そのため、駐在している日本人客を対象としたお店が数多くあります。具体例としては「飲食店」「美容室」「語学教室」などです。こうしたお店でスタッフ募集の求人を見つけて応募し、働く方法です。
人気の理由は、日本人を相手にしたお店なので言語に関する不安が少なくなります。
お店の経営者や店長が日本人というケースも多く、言葉に不安があってもスタッフとのコミュニケーションを日本語ですることができます。
また、相手にするお客さんも日本人が多いので、こちらも言葉の心配をする必要がありません。
経営者が日本人であればお店の運営システムも日本のお店のようになっていますので、過去に同じような業種の経験があれば仕事の流れをつかむのも早いです。
日本で美容師として仕事をしていた、飲食店で長い間働いていたという経験があれば、その経験や資格を海外で生かすこともできます。
現地では、日本人スタッフで、しかも即戦力の人材を雇うことができるというのは簡単なことではなく、求人に応募すれば即採用ということも珍しくありません。
何人もの日本人スタッフを雇った経験のある会社であれば、就労に関するビザの取得や税金面に関する対処法も教えてもらうことができる可能性があります。
自身のスキルを生かしたアルバイト
1つ目のアルバイトに似ていますが、どこかの会社に雇ってもらうのではなく、駐在妻自身がお店や教室を作ってしまいアルバイトをする方法です。
特に駐在妻自身に他の人とは違うスキルがあれば、そのスキルを生かすチャンスになります。
例としては「ピアノ教室」や「ダンス教室」「美容室」などです。
- 日本でピアノ教室の講師をしており、海外赴任時にピアノを持参したので自宅でピアノ教室を開催し報酬を得ている。
- ダンス教室の講師をしていたので、現地でダンス練習ができるスタジオを借りて教室を開催している。
- 日本で美容師をしていたので、自宅の一部を美容室とし、現地で手に入る道具を使ってサービスを提供している。
ほかにも、管理栄養士の資格をもつ人がアレルギー対応食を作って販売しているケースやネイリストの資格を持っている人が自宅でネイル教室を開催するといったようなものもありました。
共通しているのは、駐在妻自身が主体となって実施しているアルバイトでサービスを提供する対象が現地に住んでいる日本人向けとなっていることが多い点です。
また、自分がもっているスキルや資格を生かすことができるので、負担感なく仕事をすることができるのと、雇われているわけではないので自分の予定を優先しながらアルバイトをすることができるメリットがあります。
一方でデメリットとして、アルバイトというよりも起業に近い形となるのでサービスや商品を提供しつつ、運営までしなければいけないのでかなり忙しくなります。
また、現地での需要にマッチした仕事でなければ人を集めることができません。
さらに、サービスや商品に対する品質に責任を負わなければいけないプレッシャーもかかりますが、やりがいはあるアルバイトになります。
難しいのは、赴任が終了したらおしまいになってしまう点です。運営側も辛い思いをすることになりますが、サービスを提供してもらっていた側も寂しいことになるので終わり方も事前に考えておく必要があります。
現地企業でのパート業務(コンビニやホールスタッフなど)
3つ目に多いアルバイトが、現地の会社に採用してもらう方法です。
その中でも業種として人気が高いのは「コンビニエンスストア」「カフェ」「スーパー」といった日本のアルバイトでもおなじみの業種になります。
世界的に有名なチェーン店系であれば接客や商品の作成マニュアルはほぼ同じなので、経験のある業種であれば負担感なく仕事をすることができます。
外国人留学生やワーキングホリデーで留学している人を積極的に受け入れている業種もあり、海外で働いていることを実感できるアルバイトです。
メリットは、さまざまな人と触れ合うことができるので、海外駐在でしか経験できない仕事をすることができます。
また、現地のスタッフと話をしたり、お客さんと会話をしたりすることも多いので、語学スキルについては飛躍的に伸びていきます。
デメリットも関係しますが、現地の企業で働くときに躊躇する理由として「言葉の問題」があります。
日本人相手のアルバイトであれば言葉の心配をしなくてよいのですが、現地で働くとどうしても言葉の問題が出てきます。
ただ、これも経験を積んでいけば解消することができますし、逆に現地で働いたほうが圧倒的に言葉に関しては伸びていきます。
注意点として現地企業で採用されるためには「就労許可」の証明が必要になります。
現地で採用される場合、給与の支給がほとんどで銀行振り込み(特に大手のチェーン店ではほとんど)になります。
大手のチェーン店系ほど就労に関する確認は厳しく、ビザに関するチェックも厳しいです。
また、給与を振り込むための銀行口座の準備等も必要になってくるので、アルバイトを申込した際にどんなものが必要になるのか事前確認しておきましょう。
日本企業でのサポートスタッフ
アルバイトの求人を出しているのは現地の会社だけでなく、現地に展開している日本企業でも求人を募集しているケースがあります。意外なところでは旦那さんが働いている会社で配偶者をパートとして採用するのもよくある話です。
位置づけとしてはサポートスタッフという名目になっているケースもありますが、パソコン関係の入力補助などを担う事務職員、現地スタッフとの通訳業務などです。
メリットは旦那の会社で働くことになるので、会社公認のアルバイトをすることができます。駐在妻としての事情も考慮されながら仕事の内容やシフトが組まれているので働きやすいです。
また、日本企業のネットワークを利用して他の仕事を紹介されるケースもあります。筆者の周りの例としては、
- 保育士の資格をもっている駐在妻が現地の日本企業が共同で開園した保育園のスタッフとして採用された。
- 看護師の資格をもっていた駐在妻が現地で巡回医療にあたっていた医師のサポート役として採用された。
このようなケースがありました。
求人の方法も特殊で、海外に駐在していると参加することが多い日本人会を経由して情報が入ってくることもあります。
どのような仕事があるのか、また自分のもっている資格や経験とマッチするかどうかなど運の要素が強いところはありますが、周囲から認められて働くことが多いので安心して働くことができます。
クラウドを利用して日本からの仕事を受け負う
インターネットが普及したことで仕事によっては、ネット環境とパソコンやタブレット端末さえあれば仕事をすることができるようなものもあります。
日本でも「ランサーズ」や「クラウドワークス」が有名ですが、ネット上の仲介業者を通して仕事を請け負い、働いているという人もいます。
仕事の内容も量も自分で調整をすることができ、すべて日本語で仕事をしていくことができるので海外で仕事探しをしなくてよいアルバイトです。
業務内容としてはオンラインでの集計処理やプレゼンテーションの作成、動画編集など能力に合わせて、できるところからはじめられます。さらにライターとして文章作成を契約している人もいます。
メリットはいつでも好きなときに仕事をすることができるので自分の予定と調整をしやすい点や海外で働くわけではないので海外口座を準備する必要がなく、日本の口座に振り込んでもらうことができます。
デメリットは、厳密にいうと日本で収入を得ることになるので、報酬額によっては日本で確定申告をするなど税金への対応が必要になります。
雇用されていた会社からの業務委託契約
少し特殊なアルバイトかもしれませんが、日本で雇用されていた会社から業務を請け負っている人もいます。
駐在妻が日本で働いていた会社を辞めたときに、一部の仕事をオンラインで請け負う契約を交わして赴任してくる方法で、オンラインで仕事をすることができるようになった最近、増えてきました。
業務内容としてはパソコンの事務仕事やクライアントとの連絡調整役で、給与は減り、契約内容も正社員の頃とは変わっているものの、帰国後に正社員としてまた登用してもらうことを前提に仕事をしている人が多いです。
報酬は少ないもののボランティアをしている駐在妻もたくさん
駐在妻は就労に関してどうしても制限がついてしまうためなかなか働きにくいところがあります。
それでも「何かの役に立ちたい」「外で活動したい」と思っている駐在妻は多く報酬はほとんど得ることができないボランティア活動をしている人が多くいます。
日本人学校での学習支援や読み聞かせのボランティア、会場費のみを徴収したダンス教室やバレエ教室の開催など収入を目的としない教室講師などです。
報酬を得てしまうとさまざまな制約に引っかかることになるので、それを避けるため無償のアルバイトといった感じです。
その代わり、日本人会から貢献に応じてイベントでの利用券が配布されたり、特定の飲食店で使える割引券が提供されたりしています。
海外でアルバイトをするというのは、気持ち以上にルールや法律に縛られることが多いです。
大変な苦労をして就労するぐらいならばできる範囲で活動する駐在妻も多くいます。
まとめ
ここまで駐在妻のアルバイト事情について紹介をしました。
査証(ビサ)や旦那の会社の許可など様々な制約があるものの駐在妻がアルバイトをしているのは多くあります。
しかし、その目的はお金を稼ぐというのが主眼ではなく、日本人社会に貢献をしたい、現地のことを学んでみたいという思いからアルバイトをしている人が多いです。
筆者自身もアルバイトを通してたくさんの仲間ができ、筆者自身のスキルアップにもつながりました。
海外でバイトをしていた経験は誰しもができるわけではないので、アルバイトをできる環境の駐在妻であればぜひチャレンジしてみてください。