駐在する旦那に帯同する奥さんはどんな仕事をしているのでしょうか。
また、これまでやってきた仕事は辞めなければいけないのでしょうか。
夫の駐在が決定をしたものの、自分がこれまでやってきた仕事についてどうすればよいのか不安を抱えている人に情報を提供します。
もくじ
駐在妻の仕事事情はどうなっているのか
駐在妻の仕事について
実際に駐在をしていると日本で生活をしていた時には仕事をしていたという奥さんは多くいます。
では、そんな人は日本での仕事をどのようにしてきたのでしょうか。
多くの答えが「辞めてきた」という人です。これにはいくつかの理由があり
- 旦那に帯同するので日本での仕事ができなくなるから
- 赴任期間が不明でいつ日本に帰って仕事を再開できるか分からないから
- そもそも旦那の会社の就業規則で赴任中は仕事ができないから
などの理由が挙げられます。
海外赴任の場合、奥さんが働いている会社で「配偶者同行休業制度」を設けている企業もありますが、この制度を利用するにはある程度「帰国時期のめどがついている」という条件がついていることがあります。
海外赴任では帰国時期が明確になっていることは少なく、帯同する奥さんの間でも配偶者同行休業制度は使いにくいと話している人も多いです。
駐在妻が海外で働くというのはハードルが高い
海外に赴任してから働けばよいと思うかもしれませんが、そこには高いハードルがあります。
もちろん慣れない環境、言葉の違いがあるなどのハードルもありますが、それらをクリアしたとしても乗り越えなければいけない「法律の壁」が立ちはだかります。
「VISA(査証)」の問題です。
ビザは、日本からほかの国に入国する際に、入国した国が発行するもので多くの国で「短期滞在(おおむね30日や90日が多い)の場合、ビザの取得を免除する」という付帯条件が付いているので、海外旅行に行くときにビザを取得するというは稀かもしれません。
しかし、駐在となると話は変わります。駐在をする場合、旦那は「報酬を得る」ことになります。
さらに「長期の滞在」になります。この2つの条件に該当する場合、ほとんどの国でビザの取得となります。
例えば、アメリカの場合、日本に本社がある企業で、アメリカにビジネス目的で入国し就労する場合には「E-1」ビザの取得が必要です。
さらに「E-1」ビザで入国した旦那の家族は「E-2」ビザを取得しなければいけません。
短期滞在(90日以上から180日以内)のビザである「B-1」ビザでは就労することはできません。
このようにビザによって就労は厳しく制限されています。
先ほど述べたのはアメリカの例ですが、アメリカ以外の国でも就労に関するビザの取得には厳しい制約が付いています。
アメリカでも「E-2」ビザで滞在している場合、就労をすることはできるものの、ビザ取得後に就労許可申請をして認められなければ就労することができません。
そもそも「滞在ビザ」では就労ができないという国も多く、駐在妻が就労するにあたり、法律の壁が立ちふさがることを理解しておきましょう。
日本の仕事の取り扱いも確認
近年オンラインで仕事ができるようになったこともあり、日本でやっていた仕事の量を減らして海外に赴任し、オンラインで仕事をするという人も増えています。
また、在宅ワークとしてできる仕事に登録をしてライターをしたり、動画撮影や編集といった場所を選ばない仕事を選択したりする奥さんもいます。
日本での仕事の経験をそのまま活かすことができる、また、パソコン1台あれば場所を選ばず仕事ができるメリットがあります。
一方で、この仕事の仕方にも注意が必要です。
なぜならビザの問題が絡むため、専門家に確認しておく必要があります。
1つ目は、海外で働いて得た収入を日本で受け取っていることになります。
これが就労とみなされるかどうかは判断が分かれるところなので、まずはこのような日本の仕事を海外で行い報酬を得ることができるのかどうか確認します。(確認する方法としては、日本の会社を通して調べてもらうやり方もありますし、海外で会計士のような人に頼む方法もあります。)
また、日本の口座に給与が振り込まれている場合も確定申告が必要になるケースがあります。
海外にいると日本での手続きは非常に不便です。税理士に事前相談しておくと不安がなくなると思います。
駐在妻たちの思い
では、実際に海外に駐在妻をしている人は仕事についてどのように思っているのでしょうか。
私の周りにいる人やこれまで接してきた人の仕事事情、考え方について一例を紹介します。
自分のキャリアアップのために日本の仕事を継続する
最近増えてきているタイプが、これまでのキャリアを無駄にしないようにするために日本での仕事を継続する人です。
周囲の人に聞くと10年前までは、日本の仕事を海外でもするという人は少なかったのですが、最近増えてきたということです。
このような状況になってきた要因として
- 仕事のオンライン化、在宅ワークをすることができる環境が整ったことにより海外でも仕事を続けられるようになった。
- 企業の「育児休業」や「時短勤務」への意識が高まり、在宅ワークしやすい状況となり、海外への帯同でも仕事を辞めることなく続けられるようになった。
上記のような要因が、日本での仕事を継続できるようになった理由です。
もちろん仕事の内容や会社の条件によって全ての配偶者ができるわけではありません。
また、日本で行う仕事に比べると業務量が少なくなるので、給与面でも下がることが多いですが、これまでになかった駐在妻の仕事の仕方が生まれてきたと感じます。
海外で生活する経験を生かして新しい自分を見つける
2つ目の考え方は、海外での生活経験を生かして、新しい自分を発見していく人もいます。
海外での生活は、誰もができるものではありません。日本を離れるからこそわかることもありますし、その国のガイドブックには載っていないような情報を知ることもできます。
私のそばにいた人でも、駐在帯同中に新しい自分を見つけて、帰国後に活躍されている方が見えます。
一人目は、海外生活をしている間に語学力を身につけ、英語だけでなくスペイン語まで話すことができるようになりました。
スペイン語検定の資格を取り、日本に帰国後は主に学校現場でスペイン語の補助が必要な児童生徒や保護者と学校を結ぶ通訳として活躍をしている人がいます。
この方は、赴任前は、専業主婦だったので海外赴任をしている間に新しいスキルを身につけて、日本に戻った後はスキルを活かして仕事を始められました。
二人目は、日本で一般企業の会社員をしていて、海外赴任に伴って退職をされた方です。
この方は、赴任中にその国の文化や魅力、食事などをブログで公開していました。
併せて、在宅ワークでレポートを出版社に送るなど執筆活動を中心に行われていました。
赴任中に様々なサポートを書くことで、文書作成のスキルや情報発信のスキルを磨き、日本に帰国後は出版関係の会社に再就職して現在も働いています。
駐在妻の仕事というと語学力を生かした仕事が多いというイメージがあるかもしれませんが、様々なスキルを磨くことができます。
駐在中の空き時間を見つけて日本の資格を取得
海外赴任中の奥さんは仕事をすることができないので、暇になってしまったという人もいます。
そんな人でも駐在中にスキルアップに成功した人がいます。
その1つが資格の取得です。
仕事をするにあたって資格があると便利ですが、この資格を海外赴任中に取ってしまう人もいます。
全ての資格を取得することができるわけではありませんが、インターネットで勉強して試験を受け取得できる資格もあります。
資格を取って、日本に帰った後で新しいステージを目指すという奥さんもいます。
日本でバリバリと仕事をしてきた人は、海外に赴任してもできる範囲や得意なことでスキルアップをして日本に帰ってから再出発をするというモチベーションの高い人が多いです。
具体的にどんな仕事をしているのか
ここまで駐在中や駐在後のことまで含めながら駐在妻の仕事事情について紹介しました。
ここからは駐在をしている人が、駐在中にどんな仕事をしているのかに絞って紹介したいと思います。
ただし、前述したようにビザ(査証)や勤務条件によってアルバイトであっても禁止されていたり、許可を取らなければいけなかったりするケースがあります。
事前に自分の条件を確認してから仕事を始めてください。
語学力生かして日本人社会に貢献
駐在妻をしながら働く方法としてよく聞くのが通訳関係の仕事です。
持ち前の語学力を生かしてすることができる仕事ではあります。
働く場所は様々で、日本人学校のサポート教員として働いたり、旅行会社の関係者として働いていたりするケースもあります。
また、旦那が務めている会社から依頼をされて、スタッフとの通訳や新しく赴任してきた人のサポート兼通訳として働いている人もいます。
赴任中の期間限定のお仕事ですが、せっかく海外に来たことで身につけた語学力を生かすことができます。
本格的に働きたい人は、通訳の会社と契約するケースもあります。
ただし、この場合はレベルが非常に高く、英語検定で言えば一級または準一級程度、またSpeakingだけでなくWriting能力も求められます。
英語以外の言語を話す地域では、英語と現地の言葉というように三言語話すことができるスキルが求められることもあります。
報酬は高くなりますが、正式に契約をしてもらうためにはそれなりの語学力が求められるようになり、だれにでもできるような仕事ではありません。
現地の文化に入り込むためにアルバイトをする
2つ目によく聞くのが日本でいうアルバイトやパート感覚で働いている人です。
海外でも日本と同じようにアルバイトやパートで働く人を募集している企業やサイトがあります。
求人方法も店頭で「求人募集」を行う場合もあれば、インターネットの求人サイトで募集をしているケースもあります。
インターネットの求人募集サイトは現地の言葉で書かれているため言葉に不慣れなうちは難しいかもしれません。
また、インターネット求人は、事前登録をする必要があり、手間がかかります。
店頭の求人も言葉は現地語ですが、時給と勤務日などが分かりやすく書かれています。
現地の会社でアルバイトをするメリットとして、技能的な仕事が多く言葉が不慣れでも始めやすい点があります。
日本でもコンビニエンスストアの店員さんに外国人留学生が増えています。
これと逆のことが言え、コンビニエンスストアや大手飲食チェーン店などはマニュアルもしっかりとしており、多少言語が不慣れでも働きやすいメリットがあります。
駐在妻ではありませんが、日本人留学生も現地の学校に通いながらアルバイトをしているケースもあり、その点からも仕事を始めるハードルは低いです。
2つ目のメリットとして現地の人たちの文化に入り込んでいくことができる点です。
アルバイトをすると現地の人と接することが多くなります。
駐在の人たちは、どうしても日本人同士で集まってコミュニティーを作りやすく、現地の文化や人の考え方に触れる機会が少なくなりがちです。
アルバイトは現地の文化に入り込むチャンスとも言えます。
3つ目は、比較的辞めやすいという点です。
駐在妻の宿命と思わなければいけないのが「突然の転勤」です。
日本への帰国はもちろん、同じ国の中での横異動、別の国への異動など様々な異動があります。
かなり前に異動の通知があればよいのですが、「2か月後に異動」というような突然も多いです。
通訳の仕事のようにしっかりと契約をして仕事をしていると、突然の異動の際にいろいろな方面に迷惑をかけてしまう可能性があります。
アルバイトは簡単に辞めることができる仕事とは言えないですが、少なくとも年間で契約するものに比べれば辞めやすい特徴があります。
日本でやってきたことを活かして活動する
意外と思われるかもしれませんが、私が見たり聞いたりしている中で一番多い駐在妻の仕事のやり方が、日本でのスキルをそのまま日本人相手に活かして仕事をするパターンかもしれません。
例としては以下のような人がいました。
- 日本の美容室で働いていた美容師の免許を持った方が日本人相手に自宅の一部を改造して髪を切るサービスを提供した。
- 日本でバレエ教室の講師をしていた駐在の奥さんが現地に来てから会場を確保しバレエ教室を開いて多くの子どもが通っていた。
- 料理が得意で、飲食店でも勤務経験のある奥さんが、日本人向けに総菜を作り、日本食材店や自身のSNSを利用して販売している。
ここに挙げたのは一例で、ピアノを持っていて自身も弾くことができる人がピアノ教室を自宅で行っていたり、教員免許を持っている方が日本人学校で支援員として働いていたりするなどのケースもあります。
ここに挙げた働き方の共通点として
- 日本でのスキルをそのまま活かしている。
- 主に日本人向けのサービスである
という点です。
しかし言葉の不安がなく、しかも自分のスキルをそのまま活かすことができるのは大きなメリットです。
日本人社会の中では「日本人にやってもらう」ことに対する安心感もあり、習い事に関しても日本ほど豊富にないことからピアノやバレエ、ズンバやヨガの教室、ネイルサービスなどは好まれる傾向があります。
デメリットは、その人がいなくなるとできなくなってしまうので、長期的に、手広くやるというよりは自分のできる範囲で行うという考え方が必要です。
また、日本で持っている資格は基本的に外国では通用しません。
医師免許や薬剤師、看護師なども海外では別資格となってしまうことが多いので注意が必要です。(教員免許は日本人学校や日本人学校の補習校で勤務するのであれば、有効とされることが多いですが、現地校の場合はだめと言われやすいです。)
インターネット環境を生かしてオンラインで報酬を得る
最後に紹介する方法はインターネットのサイトを利用して稼ぐ方法です。
「ランサーズ」「クラウドワークス」などライティングをしたり、アンケートに答えたりすることで報酬を得ることができるサイトがあります。
このようなサイトに登録をして、ライターやデザイナーとして仕事を受け稼ぐ人もいます。
こうした仕事をしている人は、大々的に公表していないことが多いので実際にどのくらいの人が報酬を得ているのか分かりません。
しかし、このような働き方も駐在妻はできるということを知っておいてもよいです。
まとめ
ここまで駐在妻の仕事についてまとめました。
日本で働いていた人は海外に赴任してからも持っているスキルを生かしたり、現地の文化に溶け込む意味で仕事にチャレンジしたりする人が多いです。
特に他の日本人があまり持っていないスキルや日本人社会から好まれるような能力があるのであれば、それが仕事にできます。
現地で仕事を探して働くのも駐在だからこそできる経験ですし、その経験を生かして日本に戻ってから、新しい仕事を見つける人もたくさんいます。