語学スキルがどのくらいあるのかを知るための指標として使われているものに「TOEIC」(国際コミュニケーション英語能力テスト)があります。
TOEICは、一般財団法人の国際ビジネスコミュニケーション協会が運営している、ビジネス英語の運用スキルを測る試験です。
もくじ
海外赴任にTOEICは関係あるか
海外赴任の目安になる
TOEICが海外赴任の目安になるかと言われると正直、その会社によって異なるというのが実際です。
しかし、企業として英語ができるかどうかの指標としてTOEICを利用することはよくあります。
TOEICを主催している国際ビジネスコミュニケーション協会によると『TOEIC Programを実施している企業・団体の5~6割が、海外出張や赴任者の選抜時にスコアを要件または参考にしている』と回答をしています。
全ての企業がTOEIC Programを採用しているわけではありませんが、自社の社員の英語能力をはかる方法として多くの企業でTOEICが使われていることが分かります。
TOEICを海外赴任の目安としている場合は、国際ビジネスコミュニケーション協会の出しているスコアが目安になります。公表されている数値は
- TOEIC L&Rスコア570~810点
- TOEIC S&WスコアSpeakingとWritingそれぞれ120~160点
この基準となる点数は、英語のコミュニケーション能力がスムーズにとることができ、業務英語も十分に話すことができるレベルを意味しています。
TOEICのスコアの取り扱いは企業で異なる
TOEICからは海外赴任や英語能力の一定水準が出されていますが、スコアをどのように取り扱うのかは、勤めている会社によって大きく変わります。
入社をする段階からTOEICの点数を重視して、エントリーシートの段階で一定の点数以下を足切りに使う会社もあれば、入社をしてから個々の努力によりTOEICの点数を取得、点数を人事評価の1つとすることで、入社後に異動で海外赴任のある部署に転属させるケースもあります。
実際に私の旦那のケースですが、旦那も技術職として入社し、英語に関してはそこまで話すことができる人ではありませんでした。
入社後に海外企業との取引が増えてきたことで英語を学び、TOEICの点数を取得、その点数を人事に報告していました。
技術畑で10年近く過ごしてきたころ、海外への赴任がある部署に異動となり、本格的に海外赴任をするようになりました。赴任する前のTOEICは約700点ぐらいでした。
一方で、友人の旦那の会社では、採用時にTOEICの点数を記入し、その点数によって採用後に振り分けが行われていました。
海外との連絡調整をする部署では、定期的にTOEICの点数を報告する必要があり、点数が良くなければ他の部署に異動になるケースもあります。
もう一人の知り合いの事例では、ある時までTOEICの点数は人事考課に全く関係なしで会社に報告する必要もなかったのですが、海外に関係する部署へ異動となり、異動後に英語を学んでいる人もいます。
このようにTOEICスコアの取り扱いは、企業の育成方針によって大きく変わります。
海外赴任者と海外出張者で扱いが違う
会社の中では「海外赴任者」と「海外出張者」では扱いが違うことが多いです。
出張者は、短期間相手の国に行くだけなので語学力に関しては、そこまで高いものを求めることはありません。
現地で付く通訳で十分です。また、赴任者の家族関係にもそこまで配慮をする必要がありません。
一方、海外赴任者となると相手の国の言語をベースとして交渉をすることになるので高い語学力が求められます。
また、赴任者だけでなく家族や親族にまで影響が及ぶため、事前に海外赴任をすることができるのか調査が入ることもあります。
さらに、海外赴任させる場合には通常の給与の他に、家族手当や住居手当、赴任手当などを出す必要があり、一般的な社員の2倍から3倍程度のコストがかかります。
このため、会社としても「海外赴任させるのにふさわしい人材であるか」という観点から育てることが多くなりつつあり、入社の段階で高い語学力を持っているよりも、入社してから本人の適性を判断して語学力を育成させていくという方針にしているところが多いです。
TOEICスコアの取り扱い
企業ではTOEICスコアをどのように取り扱っているのでしょうか。
海外赴任するためにどの程度のスコアを取ることができるようになれば良いのか解説していきます。
総合職なら入社時はそんなに意識する必要なし
就職するときから海外赴任を考えている人は、海外赴任をする可能性が高い企業を受けることになります。
まず、日本で大手と言われている会社では入社する際にTOEICスコアを足切りにしている会社は少ないです。
もちろん、TOEICのスコアを持っているほうが優位にはたらく可能性は高いですが、採用条件に「一定点数以上が必要」と明記している企業の方がまれです。
したがって、入社をするためにTOEICの高い点数が必要であると意識しないほうが良いです。
総合職で採用されている人は、入社してからが分かれ目になっていきます。
この際に海外赴任をすることができるような部署を目指していくのであれば、TOEICまたは、その会社が必要としている語学を学ぶことになります。
近年はグローバル化が進み、英語ができればよいというわけではありません。
会社によっては中国との取引や中南米との取引がメインとなるところもあります。
どの部署の人が今後必要になってくるのか読みにくいところもあるので「英語ができるに越したことはないが、英語ができる人ばかりの採用はあまりしたくない」というところが本音です。
したがって、採用前の段階から英語に特化していくのではなく、採用後に自社の状況を見ながら人材育成をしていく方向にシフトしています。
海外への赴任を希望するのであれば、会社の状況に応じて海外への希望を出すことと、希望が通るように自分の語学スキルを磨いておく必要があります。
会社の方針、本人の希望、そして能力と全ての方向がそろったときに海外赴任をすることができるようになってきます。
このときの目標となるTOEICのスコアは700点前後です。また、企業として大切な言葉(技術系であれば英語の説明書、営業系であれば英語の契約書など)を正しく読む力が必要になります。
2回目の赴任となってくると話は別
海外赴任の場合、1回目と2回目では求められてくるものが違います。
1回目の場合は下の立場で赴任することができたとしても、2回目の場合にはそれなりの立場または管理職で赴任するというケースも増えてきます。こうなってくると語学力も高いスキルが求められてきます。
1回目ではTOEICのスコアに関して、ほとんど気にされることはなかったとしても2回目では語学スキルが求められてきます。
TOEICを人事評価として採用しているところでは1回目よりも良い点数を求められますし、点数的にも700点台の中盤から後半ぐらいのスキルがないと管理職として仕事をしていくのは現地に行ってからが大変です。
英語圏以外の国に赴任する場合、その国の言葉をある程度話すことができるスキルが求められ、言葉の検定を受けなければいけないケースもあります。
人事審査に影響を与えるTOEICスコア
TOIECのスコアは、人事評価に影響を与えることが多く、すぐに影響を与えなくても企業側としては情報としてストックしているケースが多いです。
これも主人のケースですが、技術職で入り、初めてTOEICを受験して点数を報告したのが5年目ぐらい、そこから海外に関連する部署に異動するまでにはさらに5年かかりました。
あとで聞いた話では、「人事部の方でTOEICを受験していることとある程度の点数を取っていることは把握していた。すぐに異動するのではなく、異動先での取引や今の仕事を生かすことができる部署を選定しているうちに時間が過ぎ、候補者となってから3年目に異動をすることになった。」というお話でした。
会社でも入社して3年目ごろから英語や他の言語などを自主的に学ぶよう推進しており、学習をする場合には補助金を出すといった方策も取られていました。
入社の段階では英語のスキルにとらわれず幅広く採用をしておき、入社してからその人の適性を見極めて、海外赴任をすることができるスキルを企業として身につけさせる意識が感じられます。
TOEICの高スコアはやっぱり有利
当然のことではありますが、高いTOEICスコアを持っている人は、海外赴任のチャンスを掴みやすいです。
国際ビジネスコミュニケーション協会の出しているスコアを目安とすると「600点以上あれば履歴書に書いてもよい」ぐらいのレベルになります。
これで英語検定(英検)の2級とほぼ同程度になります。
TOEICスコアの目安は?
まず、就職する観点から見ればTOEICのスコアはあったほうが良いです。
実際企業の求人を調べていくと、「TOEICで600点以上」のスコアを求めている業種には次のようなものがあります。
- 一部大手企業の新卒採用(商社等)
- 一部中小企業の中途採用(国際担当等)
- 航空会社のCA採用
- ホテル関係(宿泊部門や外資系など)
どれも語学能力が必要な業種であり、採用条件から見ても海外とのつながりを重視する、または海外への赴任を前提としている部署を持っているところです。
これらの条件に当てはまって採用をされるということは「海外への赴任」を前提とした採用となるので、TOEICの点数があれば優位に採用試験を受けることができます。
したがって新卒採用時にTOEICの点数で目指すべき点は「600点」が1つの目標になります。
さらに上のレベルで、外資系企業、または海外に本社がある企業を受けるケースもあります。
こちらは「700点」が1つの目標値になります。700点あれば一般的な採用枠ではなく「特別採用」の枠が設定されている企業も多くあり、他の人よりもかなり優位になります。
入社だけでなく配属にも大きく影響
近年増えてきているのが、入社後に語学スキルを磨く方法です。
最初から語学力の高い人を採用するのではなく、総合職として採用しておき、その後の適性で配属先を変えていく手法です。
会社の理念や求めたい人に合わせて教育をすることができ、語学力も必要な語学力を会社が育成します。
航空会社などでも採用されている方式で「自社養成」とも呼ばれています。
こうした会社では、入社してからのスキルアップが大切になります。
会社の研修制度を利用したり、自分で英会話スクールに通って学んだりして、海外赴任をすることができるよう準備をします。
一定のスコア以上を取ることが出来たら人事評価としてシートに記入し、あとは配属されるのを待つばかりになります。
この際にも点数の目標としては最低でも600点以上、英語圏に赴任するのであれば700点程度は欲しいところです。
また、企業によって専門文書を読む必要があります。専門文書を読むことができるのかどうかを試験する社内審査も大手では設けられていることがあるので、社内審査を突破できるように勉強しなければいけません。
TOEICのスコアを獲得するために勉強をする
TOEICのスコアを取るためには勉強するしかありません。そこでまず確認をしたいのが、企業がどのような力を求めているかです。TOEICでは
- TOEIC Listening & Reading Test
- TOEIC Speaking Test
- TOEIC Writing Test
の3つがあります。
国際ビジネスコミュニケーション協会が示している数値では
TOEIC Listening & Reading Test | 570~810 |
TOEIC Speaking Test | 120~160 |
TOEIC Writing Test | 120~160 |
となっています。
一般的にはListening&Readingの能力を申告することが多いですが、企業によってはSpeakingを重視したり、Writingを重視したりするところもあります。
さらに社内で目標を設定しているところもあり、『海外事業部への希望は〇〇点以上』というように具体的に数値化しているところもあります。
海外赴任を考えるのであれば、まずは企業の求める基準を確認しましょう。
働きながらスコアを獲得する
TOIEICのスコアを取るといっても簡単なことではありません。
特に会社で働いている人は、仕事の時間以外のところで勉強時間を確保する必要があります。
ReadingやWritingでも一般的な勉強で獲得できるのは600点ぐらいまでで、そこから先は専門的な知識や話す技術が必要になってきます。
海外への赴任を考えるのであれば700点、管理職レベルになると800点ほどの点数が欲しくなってきます。
そこを目指していくためには、英会話スクールやビジネス英語を学ぶことができるところに通って勉強するのが最短コースになります。
英会話スクールというと、決まった時間に通う必要があり、働いている人には使いにくいのではないかと思われますが、ビジネス英会話はビジネスマンがスキルアップのために通いやすい時間設定や学び方の工夫が行われています。
ビジネスマンが英会話を学びやすい方法としては「教室に通う」「オンラインで学ぶ」この2種類が主な方法になります。
そしてもう1つ大切なことが「TOEICの専門コースがあるところ」がおすすめになります。
英会話スクールと言っても全てのことを網羅している学校は少なく、特化したコースを設けているところが多いです。
「大学入試コース」「高校入試コース」などと名前がついていたり、「英検コース」と検定ごとに合わせて対策コースを設けていたりするところもあります。
TOEICの点数をアップしたいのであれば、狙うべきコースは「TOEIC対策コース」のあるスクールで、さらに目標点数ごとにレベル分けされているのであれば、よりよいスクールになります。
自分が通いやすい場所に「TOEIC対策」の専門コースを持っている英会話スクールがあれば、点数アップのきっかけになります。
時間のない人はオンライン英会話で学習
自分が通学できる範囲内に英会話教室がない場合はどうするとよいのでしょうか。
ビジネスマンの場合、通うための時間を費やすのはとても無駄です。年齢によっては家族があったり、お子さんの面倒を見たりしなければいけなかったりする人もいると思います。
そんな人でもTOEIC対策はすることができます。その方法が「オンライン英会話」です。
オンライン英会話はビデオ会話や通信教育を通して英語力を磨く方法で、自宅にいながら勉強をすることができます。
準備するものは近年多くの人が利用しているスマートフォンやタブレット端末、あとはインターネット接続環境があれば勉強をすることができます。
オンライン英会話のメリットは、なんといっても自宅で勉強をすることができる点です。
わざわざ教室に通って勉強をする必要がないので移動時間を短縮することができます。
さらに勉強時間についても自由に設定することができるところが多く、勤務時間が仕事のスケジュールに合わせて勉強できるメリットがあります。
忙しいビジネスマンにとって通う時間を短縮することができるだけでも大きなメリットではないでしょうか。
さらに費用面に関しても通常の教室に通うより安いところが多いです。
その分だけ、WritingやSpeakingの学習を追加したりすることもできます。
オンラインでもTOEIC対策の評判が高いところを選択すれば、短期間で語学スキルをアップさせることができます。
自宅で勉強をするのであれば、自分の勉強しやすいスクールを選択しましょう。
海外赴任が決まっている場合
海外赴任が決まっている人も、TOEICのスコアを取っておくとよいです。
なぜなら、海外に赴任をしている時期が一番語学スキルを伸ばしやすいときだからです。
語学力は、使っていればどんどん伸びていきますが、使わないと下がってしまいます。
つまり赴任中が最も語学スキルが伸びている時期でもあるので、そこで受験して高い点数を取ってしまうのが賢い方法です。
海外赴任が決まってからでもTOEICのスコアは取った方が良い
これまでTOEICのスコアを取ったことがない人であれば、海外赴任中にスコア取得を目指しましょう。
言葉が一番理解できる時ですし、自分の能力も知ることができます。
筆者は駐在員ではなく駐在妻という立場ですが、駐在帯同後初めてTOEICを受験したところ、これまでで一番英語を理解することができたような気がします。
赴任する側も同じで、せっかく語学力が伸びているときこそ試験を受けて自分の点数を獲得しておくと便利です。
仕事で英語を使う人は、海外赴任が終わった後も海外勤務に関わったり、他の国の人とやり取りをしたりするケースが増えてきます。
また、人事部に対して自分の能力をアピールすることができるチャンスでもあります。
すでにTOEICのスコアを持っている人であれば、海外赴任をすることで語学スキルが伸びている可能性もあります。
これまでに取ったことがないような点数を取るチャンスでもあるので海外赴任中も勉強を怠らず、TOEICのハイスコアを目指しましょう。
海外でも受験することは可能
TOEICは世界的に認められている英語能力の基準になるので、海外でも受験することができます。
検索は簡単で、インターネットで「ETS Global」と検索をすると出てくるサイトを利用してオンラインで申し込みをします。
申し込みをする際には、自分が居住している国にTOEICの運営をしている事務所があるかを確認します。
事務所の数はかなり多く、多くの国で受験できることが分かります。
受験の手続きや支払いなどもオンラインで進めることができます。
簡単ですが、少し英語の知識が必要になるところもあるので注意しましょう。
ビジネスにはTOEICはよいが、日常生活は英会話を学んだ方が良い
ここまでTOEICのスコアと海外赴任について紹介をしてきました。
ビジネスの場合には600点以上を求められることが多く、海外赴任できるレベルとなると700点近いものが求められます。
TOEICはビジネスで使う英語にやや比重が偏っているところがあり、日常会話とは少し測定する能力が違います。
例えば、生活の中での英語力を身につけたい場合には、TOEICの対策をしていくのではなく英会話の対策をしてくれるスクールに通うことがおススメです。
なぜならTOEICはReadingとListeningには優れていますが、Speakingの部分でやや弱いところがあるからです。
日常会話の中では英語を読む機会よりも「話す機会」「聞く機会」の方が多く、これらを中心に学んだほうが駐在生活では役立つ部分が多くなります。
日常英会話もオンラインがおすすめ
では、日常の英会話をどのように学んだらよいかというと、おすすめは「オンラインの英会話教室」です。
メリットの部分を中心に紹介しますが、忙しい日常生活を送りながら勉強をすることができ、教室に通う時間を省くことができます。
さらに時間も教室に比べると自由度が出てくるので空いている時間に勉強をすることが可能です。
もう1つ、オンラインであれば学ぶ場所を選びません。
つまり、海外に赴任した後もオンライン英会話ならそのまま学習を続けていくことができます。
オンライン英会話の学ぶコースにもよりますが、TOEICよりもコースの幅が広く、自分の力量に合わせて学びを選択することができます。
実際に筆者の周りにいる駐在員の方も、日本から続けているオンライン英会話をそのまま続けているという人は多くいます。
海外にいると学んだことをすぐに実践することができるので自分の語学力の伸びを実感しやすいのもうれしいです。
せっかく力が伸びてきたので、自分の力がどれくらいなのか「TOEIC」「英検」などに挑戦して得点や資格を取る人もいます。
まとめ
ここまで海外赴任に必要なTOEICの点数について紹介をしました。
国際ビジネスコミュニケーション協会が示している指標をそのまま基準としている企業もあるので最低でも600点程度、大きな会社であれば700点程度は欲しい点数になります。
ただし、入社をするときからこれぐらいの点数がなければいけないかどうかは、企業によって異なります。
入社してから語学スクールで学んで、TOEICの高い点数を取って海外赴任を目指すという方法もあるので、海外赴任を目指す人は語学スキルのアップをして、その時に備えましょう。