シャドーイングは、英語の音声をシャドー(影)のように後から追いかけて発音する英語学習方法です。シャドーイングは、英語力を総合的に向上させられるとして、高く評価されているトレーニングです。この記事では、シャドーイングの概要と効果、具体的な実践方法や注意点まで紹介していきます。
もくじ
シャドーイングとは英語を聞きながら話す学習方法
シャドーイング(=shadowing)とは、英語の音声を流し、それを聞き取りながら2〜3語遅れで発話するトレーニングです。リスニング力・スピーキング力の向上が期待されることに加え、英語を脳に定着させることで総合的に英語力を高められます。
ちなみに、シャドーイングとよく似た英語学習方法に、ディクテーションがあります。両方とも、英語の音声を聞き取っていくトレーニングですが、シャドーイングは聞き取った英語を「発話する」のに対し、ディクテーションは「書き取って」いきます。どちらも英語力の向上に効果的ですが、シャドーイングには書き取るという作業がないため、より手軽に、効率的に行えると言えるでしょう。
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シャドーイングの3つの効果とは
シャドーイングを実践する効果としては、大きく以下の3つが挙げられます。
- 音声と意味を結びつけることで、発音とリスニング力が強化される
- 単語や文法の知識が無意識的に使えるようになる
- 言い回しを覚え定型表現がすぐに使えるようになる
それぞれの効果について、詳しく紹介します。
音声と意味を結びつけ、発音とリスニング力が強化される
「文字で読めば理解できるのに、音声では理解できない」。これは日本人の英語学習者に共通する悩みです。その原因は、読み書きを重視しながら、発音やリスニングは二の次とした日本の英語教育にあると考えられています。たくさんの単語や文法の知識を保有していても、それがどう発音されるのかを知らない人が多いのです。
シャドーイングを行うと、日本人の弱点である発音が強化されます。それは、知識として持っていた英単語とその発音が結び付けられるためです。また、「発音できない音は聞き取れない」と言われるように、発音の練習をすることで英語の音に慣れることで、結果としてリスニング力の向上も期待できます。
単語や文法の知識を無意識的に使えるようになる
シャドーイングは、音声と意味を結びつけるだけでなく、単語や文法の知識を無意識的に使えるようにする方法としても有効です。これはどういうことかというと、シャドーイングをすることで、今まで「文字」として持っていた単語・文法の知識が「音声」として頭に定着します。音声として知識が定着すると、英語を聞いた際の内容の理解が速くなります。
つまり、英語を英語のまま理解できるようになるということです。こうなることで、英語を話す際も「日本語→英語」と訳する過程を省き、考えたことをそのまま英語で伝えられるようになります。
言い回しを覚え定型表現がすぐに使えるようになる
シャドーイングで口に馴染むまで同じ英文を繰り返すことで、英語でよく使われる言い回しや表現を覚え、会話中に使えるようになります。定型表現をいくつも覚えておくと、主語、動詞、修飾語、時制...などと英文を組み立てる必要がなくなり、よりスムーズに、自然な会話ができるようになります。
余談ですが、筆者は受験勉強にあたってシャドーイングを行っていました。無事合格し、初めて1人で海外旅行に行った際に、自分でも予想外なほどにスムーズに周りの人とコミュニケーションをとることができたことを覚えています。宿で会った人には「海外に住んでいた経験があるの?」と聞かれたほどです。自分でも、「なぜ、すんなりと英語の表現ができたのだろう」と疑問でしたが、後から思い返すと「シャドーイングで何度も繰り返した表現だった」ということが何度もありました。これは、まさにいくつもの言い回しと定型表現を覚えた結果だと言えます。
シャドーイングの正しいやり方を紹介
ここでは、シャドーイングの方法について紹介します。実は、シャドーイングにはいくつものやり方があり、目的やレベルに応じて適した方法は様々ですが、ここでは最も一般的な方法を紹介します。
- リスニング:まずはテキストを見ずに全文を聞きましょう
- スクリプトを読む:テキストを確認し、内容を把握します。
- リスニング:テキストを読みながら音声を再度聞いてください。
- シャドーイング:テキストを見ながら、英文を繰り返します。スピードについていけない場合や、口が回らない場合には、数回繰り返しましょう。
- シャドーイング:テキストを見ずに、英文を繰り返します。
- 5.を数回繰り返しましょう。
一般的なシャドーイングの流れは、上記の通りとなっています。なお、繰り返す途中には以下のような練習を挟むとより効果的です。
- オーバーラッピング
- ルックアップセイ
オーバーラッピングとは、テキストを見ながら音声とぴったりと合わせて音読することです。英文の読まれるスピードについていくことができるようになります。最初は英文の内容を意識して繰り返し、意味を把握できたら次は発音を意識して繰り返すことで、単語の正確な音を記憶し英語処理する速度が上がります。上で紹介した手順の「シャドーイング①」の次のステップとして行ってみても良いでしょう。
ルックアップセイとは、テキストを目で追いながら音源を聞き、一文ごとに音源を止めて、テキストを見ずに暗唱することです。上で紹介した手順では、「シャドーイング①」の後にルックアップセイを挟むことで、「シャドーイング②」を行うハードルを下げられます。
シャドーイングをする際の5つの注意点
シャドーイングを行う際に気をつけるべきこととして、以下の5つが挙げられます。
- 発音を意識して練習する
- 自分の音声を録音する
- 自分のレベルに合った教材を使う
- 情景を思い浮かべながら読む
- 何度も繰り返す
各注意点について、詳しく紹介します。
発音を意識して練習する
はじめに、シャドーイングの狙いのひとつに、スピーキング力の向上があります。ただ単に機械的に読み上げるのではなく、音声を真似て発声することが大切です。そうすることで、英語独特のイントネーションやリズム、区切り方などを自然に習得できます。
自分の音声を録音する
本当に正しく発音できているかを確認するために、自分の音声を録音することがおすすめです。録音することで、発音できていない箇所や、曖昧になっている箇所はないかを客観的にチェックすることができます。
自分のレベルに合った教材を使う
シャドーイングにおいては、自分の英語レベルに適した教材を選択することも大切です。自分の英語力から見て、あまりに難しい教材を選んでしまうと、文法や単語を調べることに時間が取られてしまいます。シャドーイングの目的は、あくまで英語の発音と意味を結び付け、定型表現を使えるようにすることです。難しすぎる教材を選ぶと、内容を理解することが目的となってしまう恐れがあります。自分が知っている単語・文法で構成された教材を選びましょう。
もし、自分のレベルにあった教材がわからないという場合には、英語学習のプロにアドバイスをもらうことも一つの手です。英語コーチングスクールでは、客観的に一人ひとりの英語力を評価し、個人にあった英語教材を用意してくれるでしょう。教材選びで迷ってしまう場合には、一度相談してみることもおすすめです。
情景を思い浮かべながら読む
シャドーイングは、ただ単に音声を正確に発音するだけでは、その効果が半減してしまいます。スクリプトの情景を思い浮かべながら読むことで、イントネーションや間合いも掴むことができます。また、「音声と意味を結びつける」という目的においても、イメージと共に覚えた方が、より記憶に残りやすいでしょう。
何度も繰り返す
シャドーイングにおいて最も重要とも言えるポイントが、何度も繰り返すということです。1度や2度音読しただけでは、脳に英文が定着することはありません。何度も同じスクリプトを繰り返し読み、日をあけて再度取り組むなど、しっかりと頭に英文を叩き込む工夫をしましょう。
まとめ
ここまで、シャドーイングについて紹介してきました。シャドーイングは、英語の音声から遅れて発音することで、リスニング力、スピーキング力をはじめとした英語力を総合的に高められる学習方法です。
シャドーイングの効果としては、主に以下の3つが挙げられます。
- 音声と意味を結びつけることで、発音とリスニング力が強化される
- 単語や文法の知識が無意識的に使えるようになる
- 言い回しを覚え定型表現がすぐに使えるようになる
また、シャドーイングを実践する際には以下の5つに注意をしましょう。
- 発音を意識して練習する
- 自分の音声を録音する
- 自分のレベルに合った教材を使う
- 情景を思い浮かべながら読む
- 何度も繰り返す
本記事を参考にシャドーイングを実践し、英語力UPに役立ててください。