スティーブン・クラッシェンは、1970年代後半~1980年代に「モニターモデル」という理論を確立しました。その中のひとつが、「モニター仮説(The Monitor hypothesis)」です。この記事では、モニター仮説の概要について解説していきます。仮説を理解することで、自身の英語学習の方法について見直すことが可能です。効率的な学習方法を見つけるきっかけとして、ぜひ参考にしてみてください。
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もくじ
モニター仮説とは?
モニター仮説は、クラッシェンが提唱したモニターモデルの中のひとつです。
モニターモデルには以下の仮説が含まれています。
モニター仮説は、習得学習仮説と特に深い関わりがあります。習得学習仮説とは、言語習得は「習得(acquisition)」と「学習(learning)」に区分できるという考えです。
【習得学習仮説の「習得」と「学習」の区分】
「習得」 | 子供が母語を無意識に身につけることや、自然なコミュニケーションを通して言語を身につけること。 |
「学習」 | 言葉の単語や文法について意識的に知ること。 |
これらをふまえた上で、クラッシェンはモニター仮説で「習得」と「学習」の機能について言及しました。
モニター仮説では「学習」はモニター機能でしかないと主張
クラッシェンは、発話をする時には、「習得」された言語のみが有効であると説きました。反対に、意識的に「学習」したものは「モニター」することでしか役目を果たしません。モニター仮説の「習得」と「学習」の具体的な機能について解説していきます。
「習得」の果たす役割
「習得」は無意識に知識を吸収するプロセスとして、言語能力の発達にとても有効だと提唱しています。「学習」とは異なり、第二言語の発話に役立てることができます。
【習得】→→→発話
【学習】→ × →発話 |
「学習」の果たす役割
「学習」によって意識的に吸収した知識は、「モニター」または「エディター」する機能しか果たさないといいます。モニターとは、アウトプットしようと思った言語を、口に出したり紙に書く前に軌道修正する役割を指します。
また、エディターとは、メモやレポートなどにすでにアウトプットした言語を、正しい文法や単語に編集する役割を指します。アウトプットの原点は「習得」することであり、より正しい規則にチェックして直すための役割が「学習」の機能なのです。
第二言語学習者を3タイプに分けてモニター度合を比較
クラッシェンは、このモニターの概念にもとづいて、第二言語学習者の運用能力を以下の3タイプに分類しました。
- Monitor over-users
- Monitor under -users
- The optimal Monitor-users
第1タイプのMonitor over-usersは、発話などアウトプットの際に、過剰にモニター機能が働いてしまう人です。モニターが強すぎるため、文字を書くのに時間がかかったり、会話することに躊躇してしまいます。
第2タイプのMonitor under -usersは、「習得」した内容に偏っていて、モニター機能の薄い人です。「学習」による知識がほとんどなく、誤った言語でも構わずに発話します。
第3タイプのThe optimal Monitor-usersは、モニター機能のバランスがとれている人です。そのため、円滑なコミュニケーションの中で、アウトプットした内容をスムーズに自己修正することが可能です。
モニター機能が働くには、「文法規則を知っている」「正確さに焦点を当てている」「モニターのための十分な時間がある」という3条件が必要です。クラッシェンの考えから、上記の3条件を見たしながら、モニター機能を過剰すぎず不足すぎず適切な量で使うことが大切 だと読みとることができます。
モニター仮説には批判的な声もある
「習得」と「学習」で機能を分けて考えるモニター仮説には、他の言語学者から批判的な声も挙げられています。
批判される主なポイントは以下の2点です。
- 「モニター機能が言語運用の妨げになる」ということを強調したこと。
- 「学習」は「習得」のような無意識的な運用には転化しないと主張したこと。
クラッシェンは、運用能力の第1タイプ(Monitor over-users)の強調により、「学習」によるモニター機能がマイナス作用であるかのような主張に偏ってしまいました。また、「習得」と「学習」の区分を「無意識」「意識」で線引きしたことにより、モニター機能が無意識的には働かないと読み取れる内容になっています。しかし、経験を積むにつれて、「学習」した知識から無意識に文字修正できるようになった、という体験をしている学習者もいるのが実際のところです。
まとめ:モニター仮説は、英語学習のモニター機能を意識するきっかけになる
クラッシェンのモニター仮説についてまとめると、以下の通りです。
- 「モニターモデル」に含まれる、5つの仮説の中のひとつである。
- クラッシェンは「習得」と「学習」にはそれぞれ独立した機能があると説いた。
- モニター仮説は俯瞰的な見解に欠けるため、批判的な声もある。
クラッシェンのモニター仮説を知っておくことは、自分の英語学習の状況を多方面から観察することにつながります。「自分のモニター機能は、過不足なく働いているか ?」「モニター機能を働かせるための英語知識(学習)は足りているか?」を考えるきっかけとして、ぜひ活用ください。
第二言語習得研究を活用した英語コーチングスクールを紹介
クラッシェンのモニター仮説のみならず、世の中には第二言語習得研究の理論が数多くあります。自分の中である程度の理解をすることはとても大切です。しかし、研究結果を全て網羅するのは大変ですし、多大な労力がかかってしまいます。そこでおすすめしたいのが、第二言語習得研究をベースとして学習メソッドを開発している「英語コーチングスクール」です。
英語コーチングスクールは、その学習効率の良さから、第一線で活躍するビジネスマンや芸能人、プロスポーツ選手も多く利用しています。忙しい社会人にぴったりの英語コーチングスクールを3社紹介します。最新の第二言語習得の方法を実践したいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
PROGRIT(プログリット)
サッカーの本田圭佑氏や水泳の北島康介氏も受講するスクールです。「世界で活躍できる日本人を増やす」ため、元マッキンゼーと元リクルートの2人が創業しました。英会話レッスンは行わず、基本的には自習がメインです。専任コンサルタントが科学的根拠にもとづくカリキュラムを提案し、モチベーション管理をサポートします。学習効率を上げること以外にも、学習時間の捻出などを通して英語習慣を身につけることができます。
プログリット(PROGRIT)の概要
『プログリット(PROGRIT)』は、2ヶ月間でビジネス英会話力を圧倒的に伸ばすことができる英語コーチングスクールです。筆者イチオシのスクールです!なんとサッカー界のレジェンド、本田圭佑氏もプログリットを受講しています。他の英語コーチングスクールとは異なり、英会話レッスンは一切行いません。その代わりに徹底して学習習慣と学習効率を鍛え上げます。英語習得には膨大なインプットが不可欠です。インプットができて初めてアウトプット(英会話)が可能になります。プログリットの英語コーチングで「学習時間×学習効率」の値を最大限に大きくします。
受講形式 | 通学・オンライン |
スクール所在地 | 関東8拠点:有楽町・神田・新宿・六本木・池袋・渋谷・赤坂見附・横浜 中部1拠点:名古屋 関西1拠点:阪急梅田・梅田 |
受講期間 | 2ヶ月~ |
入会金 | 55,000円(税込) |
料金 | 435,600円(税込)~ |
1ヶ月あたり | 180,584円(税込)~ |
講師 | 日本人バイリンガル・一部ネイティブ講師 |
返金の有無 | 30日間全額返金保証 |
給付の有無 | 一般給付金制度あり(最大10万円支給) |
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TORAIZ(トライズ)
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受講形式 | 通学・オンライン |
スクール所在地 | オンライン 関東:六本木、東京丸の内、日本橋、新宿南口、銀座、横浜西口、法人専用 関西:大阪梅田 中部:名古屋 沖縄:沖縄 |
受講期間 | 6か月・12か月 |
入会金 | 55,000円(税込) |
料金 | 12ヶ月:1,284,100円(税込) |
1ヶ月あたり | 32,300円~(税込) |
講師 | ネイティブ 日本人バイリンガル |
返金の有無 | 受講開始から1ヶ月以内に退会の場合、全額返金(月払いをお選びいただいた場合のみ適用対象外) 上記に加えて 途中解約保証、無料延長保証あり |
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講師 | 日本人バイリンガル |
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